中国競泳選手、なぜ「他国の約4倍」もドーピング検査を課されている? 厳戒処置に「これは欧米人の陰謀だ」と不満の声

AI要約

中国のパリ五輪競泳チーム、およびそのファンらが厳しいドーピング検査に対して怒りを露わにしている。

競泳選手たちは多回のドーピング検査を受けさせられ、過剰な厳戒状態に不満を示している。

中国選手の過去のドーピング問題が今回の検査の厳格化につながった可能性が指摘されている。

中国競泳選手、なぜ「他国の約4倍」もドーピング検査を課されている? 厳戒処置に「これは欧米人の陰謀だ」と不満の声

中国のパリ五輪競泳チーム、およびそのファンらが怒りを露わにしている。

理由は、中国チームに課された厳しいドーピング検査だ。

この処置に対し、男子200メートル平泳ぎの世界記録保持者である覃海洋(タン・カイヨウ)は、オリンピックのドーピング検査員は「中国チームを混乱させようとしている」「欧米人の陰謀に加担している」などと発言したと報じられている。

英紙「ガーディアン」によれば、中国競泳チームは、「パリに入ってから10日間で、選手ひとり当たり5~7回もの検査を受けさせられた」と、微博(中国で最も影響力のあるSNS)に書き込んだという。

さらに、中国の「飛び込み女王」こと高敏(ガオ・ミン)元選手が、いまのところ中国競泳選手たちの成績が冴えないのは、「1日7回もの執拗なドーピング検査を受けさせられているからだ」と投稿したことで、この厳戒処置に対する議論は熱を帯びている。

中国選手が受けたドーピング検査の正確な回数は定かではないが、香港紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」によれば、中国の競泳選手は「2024年1月1日以降21回、他国のライバル選手のほぼ4倍のドーピング検査を受けている」という。この数については、世界水泳連盟も認めているようだ。

一体、なぜ中国競泳選手は、より厳しく検査を受けさせられているのか?

背景には、2021年開催の「東京オリンピック前に、23人の中国人競泳選手が禁止薬物の検査で陽性反応を示したにもかかわらず出場が許可されていた」という米紙「ニューヨーク・タイムズ」による報道がある。

この報道があったのは2024年4月。パリ五輪はこの報道以来、初めての主要な国際大会となる。

この検出された禁止薬物(トリメタジジン)について、中国反ドーピング機関は「偶発的な汚染物質であり、選手たちは同薬物を意図せず摂取した」と説明していた。

同紙の調査によれば、世界反ドーピング機関(WADA)は中国のその説明を秘密裏に受け入れ、競技を続けることを許可したという。

結果、陽性が出た23人は無処分となり、中国競泳チームは東京オリンピックで金メダル3個を含む6個のメダルを獲得した。

その後も世界大会での中国選手らの活躍は目覚ましかった。

たとえば、陽性だった23人のひとりである前述の覃海洋は、2023年の世界選手権で50メートル、100メートル、200メートル平泳ぎを制覇する歴史的快挙をみせた。

そんな彼は、今回のパリ五輪では振るわず、100メートル平泳ぎ決勝では7位に終わっている。

ニューヨーク・タイムズの報道があった4月以降、陽性にもかかわらず中国選手を無処分としたWADAに対し、「本来、スポーツをクリーンに保つための機関のはずなのにまったく機能していない」「フェアじゃない」と、各国の反ドーピング機関や米国やオーストラリアのトップ競泳選手らが批判の声をあげていた。

これを受けてWADAは、今回のパリ五輪では中国競泳選手に対する検査レベルを高めると述べていた。

そんななかで迎えたパリ五輪だが、他の国よりも厳しいドーピング検査に対して、中国の一部の選手や代表チームの栄養士、さらには前述の高敏のような著名人らも不満を露わにしている。

今後のレースで中国競泳選手のパフォーマンスはどうなるか? 注目が集まっている。