ミャンマー、非常事態宣言6カ月延長 国勢調査にこだわる背景

AI要約

ミャンマーの軍事政権は非常事態宣言を6カ月延長し、国勢調査を実施する必要があると述べた。

国軍は選挙の公平性を担保するために正確な有権者名簿を作成する意向であり、国勢調査を重視する。

中国など隣国もミャンマー情勢を注視し、一部の国は暫定政権移行を提案している。

ミャンマー、非常事態宣言6カ月延長 国勢調査にこだわる背景

 ミャンマーの軍事政権は31日、同日が期限だった非常事態宣言を6カ月延長した。2021年2月のクーデター時に発令され、延長は6回目となる。総選挙実施に向けて、国勢調査などの準備を進める必要があるためとしている。

 同日、大統領代行を兼務する国軍のミンアウンフライン最高司令官らが出席した国防治安評議会が開かれ、正式に延長を決めた。

 憲法は宣言の期間を原則最長2年と定めるが、なし崩し的に延長が繰り返され、解除後6カ月以内とする選挙も先延ばしになってきた。この間に国軍と民主派や少数民族の武装勢力との戦闘で治安は悪化した。

 一方で軍政は有権者名簿を作成するための国勢調査に着手する意向を示しており、25年中にも宣言を解除して選挙が実施される可能性が出てきた。政府高官によると、10月1~15日の日程で調査が行われる。

 国軍が国勢調査にこだわるのには理由がある。20年の選挙では民主派指導者のアウンサンスーチー氏が率いる「国民民主連盟(NLD)」が大勝。国軍は「有権者名簿に深刻な不正があった」として結果を認めず、クーデターにつながった。これを正当化するためには正しい名簿に基づいた選挙を行う必要がある。

 ただ、選挙の公平性を担保するのは難しい状況だ。NLDなど多くの政党が解党され、戦闘地域での投開票も現実的ではない。地元メディアによると、ミンアウンフライン氏も全国で実施するのは困難という見方を示したという。

 一方、事態収束が見通せないことに、中国など隣国もしびれをきらす。シンガポールのテレビ局「チャンネル・ニュース・アジア」は情報筋の話として、中国の王毅外相が6月末に北京でミャンマーのテインセイン元大統領と会見した際、選挙実施に向けて暫定政権に移行するようミンアウンフライン氏を説得するよう求めたと報じた。【バンコク武内彩】