国際的な孤立に、国民の大脱出─「疑惑の選挙結果」を押し通して崩壊へ向かうベネズエラ

AI要約

ベネズエラの大統領選挙で現職のマドゥロ大統領が勝利を宣言されたが、集計の正当性が疑われている。

不正が疑われる事例が多数報告され、抗議デモが勃発して治安が悪化している。

国際的な非難が集中し、国内外ともにマドゥロ政権に対する孤立が進んでいる。

国際的な孤立に、国民の大脱出─「疑惑の選挙結果」を押し通して崩壊へ向かうベネズエラ

7月28日におこなわれたベネズエラの大統領選挙は、選挙管理委員会によって現職のニコラス・マドゥロ大統領の勝利と発表されたが、集計の正当性を疑われている。

事前の世論調査と選挙結果があまりにかけ離れていること、政府系テレビ局が放送した得票率を示すグラフの合計が100%を超える明らかにおかしいものであったことなど、不正を疑われるような事例がいくつも浮上した。

当局やマドゥロの支持者があらゆる手で検証を拒否していることも、さらに不信を招いている。米紙「ワシントン・ポスト」によると、投票機の結果のプリントアウトが野党側の選挙監視員に提供されなかったり、野党側の選挙監視員がマドゥロの支持者に暴力を振るわれて開票所に入れなかったりしたケースが少なからず報告されているという。

そのため、各地でマドゥロ政権に対する抗議デモが勃発し、治安当局や政権を支持する準軍事組織との衝突に発展している。

明らかに疑わしい選挙結果を受けて、外国からもベネズエラに厳しい視線が注がれており、さらなる国際的な孤立は避けられない。

米国は、詳細な集計結果の公表を求めた。アルゼンチン、チリ、コスタリカ、ペルー、パナマ、ドミニカ共和国、ウルグアイなど、ラテンアメリカ各国の指導者も、選挙結果が不公正だと非難。それに対し、ベネズエラは各国の外交官全員を国外追放した。

さらに、これまでマドゥロと比較的関係が良かった周辺国の左派の指導者らも、距離を置きはじめている。米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、いずれも左派政権であるブラジル、コロンビア、メキシコは、ベネズエラに各投票所の記録を開示するように求める共同声明の準備をしているという。

他方で、いち早くマドゥロの勝利を祝福したのは、ロシア、中国、キューバといった、民主的な選挙が実質的に存在しない権威主義の国々だ。

国内の対立や国際的な孤立のほかに、これからベネズエラが直面するであろう大きな問題はもう一つある。それは、社会の空洞化とも言える状況だ。国民の意思に反して権力にしがみつくマドゥロを嫌い、国外に脱出する人がさらに増える可能性があるのだ。

ニューヨーク・タイムズによれば、マドゥロ政権発足以降、経済的困窮や弾圧の強化に耐えられず、国民のおよそ4分の1が国外脱出を図ったという。医師、エンジニア、教師など、優秀で余裕がある人々から去っていくため、国内インフラや経済に影響を与えている。

2024年6月におこなわれたある調査では、今回の選挙でマドゥロの続投が決まった場合、国民の3分の1が移住の可能性を検討していると答えた。

国や家族を捨ててでも脱出したいと多くの人が思うほど、国民の心はマドゥロ政権から離れている。マドゥロが疑惑の選挙結果を押し通せば、ベネズエラの社会は文字通り崩壊するおそれがある。