一流アスリートたちが実践している「集中力の鍛え方」は誰でも真似できます

AI要約

トップアスリートの脳の特別な力と集中力について解説。

アスリートの集中力の鍛え方や練習から次の練習への切り替えのコツ。

一流アスリートのメンタルとシンプルなプレーへの集中力を学ぶ。

一流アスリートたちが実践している「集中力の鍛え方」は誰でも真似できます

パリ五輪が開幕し、これから各国のトップのアスリートたちが接戦を繰り広げる。彼らはどうやって驚異的な能力を発揮しているのか。一流スポーツ選手の脳の動きについて研究してきたフランスの脳科学者、ジャン=フィリップ・ラショーに、仏誌「ル・ポワン」が話を聞いた。

6月、フランスで、認知神経科学者ジャン=フィリップ・ラショーが『チャンピオンたちの脳の中身』(未邦訳)という本を刊行した。

ラショーはリヨン神経科学研究センターの研究部長で、注意力に関する研究で世界的に知られている。彼はここ10年間、トップレベルのスポーツ選手から話を聞いてきた。調べたのは、彼らが競技で成果を出すための秘訣やコツに加え、心に迷いが生じたときの対処法、限界を超えるための日々の努力などだ。

ラショーによると、一流のアスリートは次の7つの特別な力を持つ。

1. 完璧に習得した技術

2. 鍛錬によって得られた抜群の運動能力

3. ゲームを読む非凡な戦術眼

4. 対戦相手の狙いを見抜く力

5. 周囲の環境を自分の一部として感じる力

6. 進むべき道に対するビジョン

7. 目に見えないエネルギーを操る力

ただし、これらの7つの特別な力を身につけるには、「集中力」が欠かせない。

アスリートの脳は、全力を出しているときに非常に活性化し、知的活動をする人の脳を凌駕することもある。このような能力は、誰でも開発できるとラショーは言う。著書には、集中力を向上させ、メンタルを強化するための具体的な練習法も解説されている。

偉大なスポーツ選手たちの運動の秘訣について学んでみよう。そうすれば、どうやって自分の脳を「強力なパートナー」に変え、優れたパフォーマンスを出せるようになるかわかるはずだ。

──なぜ今回『チャンピオンたちの脳の中身』という本を書かれたのですか。

注意力の重要さを世間に伝えたかったからです。現代社会では人々の注意力が低下しており、その価値が正しく評価されていません。美術館の展示についても注意散漫な人に合わせて変えるべきだという議論まであります。文化が崩壊する恐れがあると言っても過言ではありません。

現代における学習のあり方についても再考すべきです。すぐに対価を得られることだけでなく、すぐには得られないことにも注意を向けなければなりません。そういった意味で、注意力や集中力がきわめて高いトップレベルのスポーツ選手のことを考えるのは刺激になります。

一流のアスリートは、最高に集中できるときに充実感を得られるようです。その状態に入ることが、メダルよりも大事だと答える人もいます。私が多くのスポーツ選手にインタビューをしてわかったのは、誰もが彼らのように注意力を高められることです。その力を日常生活の場面でも発揮できます。

──彼らが、誰でもすぐ使える集中力アップのコツを教えてくれたのですか。

優れたアスリートは、ある練習から次の練習へと非常に速く切り替えられます。それは常に明確な意図を持って練習に取り組み、心に迷いがないからです。戸惑いがあると、ためらいが生じて時間が無駄になり、いいことはありません。スポーツ選手でなくても、普段から明確な意図を持って作業に取り組むのはいい練習になりますよ。

一流のアスリートの脳は、携帯電話が鳴っても「これは重要なことではない」と即座に判断します。集中力が切れるとすぐにその状態に気づき、原因を突き止めて再び集中できるようにするのです。一流のスポーツ選手たちに発達しているのは、この感覚です。

たとえばテニス選手のノバク・ジョコビッチは、米CBSのテレビ番組「60ミニッツ」で次のように語っています。

「気が散っているときには、その事実を受け入れ、自分の呼吸に専念します。それから、いますぐ自分がすべきことを具体的に思い描き、コートで自分が立つポジションや、プレーの質に集中するのです。チャンピオンとそれ以外の選手を分けるのは、自分自身の思考や感情に戸惑う時間をいかに短くできるかです」

──そう言われると、なんだか簡単なことのように思えてしまいます。

そう、簡単です。ただ、それを日々、繰り返し実践しないと、うまくできるようにはなりません。メンタルをできるだけシンプルに保つのが大事です。一流のアスリートは最高の状態で競技に臨めているとき、難しい局面でもシンプルなプレーに徹します。彼らは体が習慣に従って自動的に動くのに任せているようです。

現代人の多くが、メンタル面のストレスや過多な認知によって疲弊しています。そんななか、集中してシンプルに動くことに徹するアスリートの姿は圧巻です。