ガザからわずか3キロ、人生初の空爆の音。イスラエルに1週間滞在して見えたリアル

AI要約

イスラエル・パレスチナの現状について取材を受けた筆者が、イスラエルの現地で体験した出来事を描いている。

イスラエルとガザとの緊張が高まる中、キブツで空爆の音に直面し、現地の住民の生活の一端を垣間見る。

取材から9カ月以上経った今でも、ニル・オズの住民たちは過去の襲撃の痕跡と共に暮らしている。

ガザからわずか3キロ、人生初の空爆の音。イスラエルに1週間滞在して見えたリアル

テレビやインターネットでその惨状が伝えられるイスラエル・パレスチナ。

私は書籍編集者だった2019年、書籍の取材でイスラエルを訪問して以来、イスラエルに住む友人や、ガザ出身の友人たちと連絡を取ってきた。私が留学中のベルギーは移民が多いこともあり、中東情勢は身近な問題として感じることも多い。友人たちの置かれた状況を聞きながら、現地の状況が気になっていた。

そんなとき、日本のイスラエル大使館から、イスラエルの今を取材する約1週間のメディアツアーへの参加を打診された。

現地はいまどんな状況なのか? 私の目からみた現地の様子を紹介する。

ガザから2.8キロ東のキブツ(農業共同体)「ニル・オズ」。

ガイドからは「ないことを祈るが、もしサイレンが鳴ったら最寄りのシェルターに可能な限り早く逃げ込むように」と言われ、現地に入った。

ガザを見ることができるこの村を訪れたのは7月2日。午前11時頃、ハマスによって焼きつくされた家のなかを歩いていたとき、突然、空気を切り裂くような音が響き、空気が震えた。

私が人生で初めて体験した空爆だった。

思わず小さく悲鳴をあげると、住民の女性に叫ばれた。

「あんたは私といるんだから大丈夫。ひるむな。ここはイスラエルだ」

周囲の人間は、慣れ切っているようで、何ごともなかったかのような顔をしている。爆音はイスラエル側のもので、その後、少し小さな爆音も聞こえた。ガザに着弾した音だという。わずか2.8キロ先で、失われた命があったかもしれない。今まで聞いたことがない「死の音」だった。

報道によるとニル・オズでは2023年10月、ハマスの襲撃で住民約400人の3割近くにあたる117人が殺害されるか拉致された。なかには、アジア人も含めたさまざまな人が含まれていた。

それから9カ月以上が経っても、黒焦げになった家に漂う煙の匂いや、シェルターに残る銃弾の痕が生々しく残っていた。

食堂では、嗅いだことのない匂いに遭遇した。思わず顔をしかめると「死んだネズミの臭いだよ」とフィリピンからのジャーナリストに言われた。「嗅いだことがない」というと「そりゃ、日本人だからな」と言われた。