かつてはサムスン会長超え、韓国長者番付1位。逮捕の韓国IT「カカオ」創業者の素顔

AI要約

韓国の大手芸能事務所「SMエンタテインメント」の経営権をめぐるカカオの株価操作に関する逮捕劇について。キム容疑者の逮捕や逮捕理由、カカオとSMエンタテインメントの関係について述べられている。

カカオのCIOやキム容疑者の逮捕によるカカオの株価への影響やキム容疑者の経歴など。彼が韓国有数のテクノロジー企業を築いた経緯やその後の事業失敗についても触れられている。

キム容疑者の出身や家族背景、起業までの経緯、そしてその成功と失敗について綴られている。カカオが韓国社会における重要な役割を果たすまでの軌跡が描かれている。

かつてはサムスン会長超え、韓国長者番付1位。逮捕の韓国IT「カカオ」創業者の素顔

韓国の大手芸能事務所「SMエンタテインメント」の経営権をめぐり、同国のIT大手カカオが、別の大手芸能事務所「HYBE」(ハイブ)による買収を阻止するため株価を不正に操作したとしてカカオの創業者キム・“ブライアン”・ボムス(金範洙)氏が7月23日逮捕された。韓国IT業界のカリスマと称されたキム容疑者とは一体どういう人物なのか。

少女時代やNCT、aespaなど人気アーティストを擁するSMの買収劇が注目を集めたのは2023年初めのことだ。

BTS(防弾少年団)などが所属するHYBE(ハイブ)がSMを買収するのを阻止するため、カカオがSMの株価を不法に操作したとされる。カカオは最終的にSMの最大株主となり、K-POPに足場を築き、世界的に注目される韓国エンタメの波に乗ることで事業を拡大し、海外展開をも狙ったものとみられている。

検察はすでに2023年、カカオのCIO(最高投資責任者)ペ・ジェヒョン被告と同社自体を株価操作の疑いで起訴。同様の容疑でキム容疑者を7月23日に逮捕した。

検察当局によると、ソウル南部地方法院は、証拠隠滅や逃亡の恐れがあるとして、キム容疑者への逮捕状を発行した。キム容疑者は容疑を否認しているという。

カカオは先週、キム容疑者が社内会議で社員らに対し、「容疑は事実ではない。私は違法行為を指示したり容認したりしたことは一度もない」と釈明したと発表していた。逮捕についてカカオの広報担当者は、「現状は残念だ」と述べるにとどまった。

キム容疑者は、韓国IT業界で新世代のカリスマと称される経営者のなかで、重大な刑事事件で逮捕された最初の人物となった。近年韓国では、サムスングループ創業者の孫で、3代目会長のイ・ジェヨン(李在鎔)氏が2021年、贈賄罪で実刑判決を受け、同年仮釈放された。現在、同グループの会長を務めるイ氏は、今年初め別の株価操作容疑で立件されるも無罪となった。

スマートフォン、タブレット端末用のメッセンジャーアプリ「カカオトーク」をはじめとするアプリで急成長したカカオだが、今回の逮捕が同社の株価に打撃を与え、23日には5%以上下落。さらに、2023年秋のCIO逮捕・起訴により、同社株はすでに時価総額の3分の1を失っていた。現在、同社の時価総額は約120億ドル(約1兆8558億円)で、キム容疑者はそのうち24%の株式を保有している。

高麗大学経営学部のキム・ウーチャン教授は米紙ニューヨーク・タイムズに、「今回の逮捕はカカオにとって最大の危機となる可能性がある」と指摘。カリスマ的創業者のキム容疑者の不在で会社が運営できるかは「残った社員らにかかっている」と続けた。同教授はまた、韓国では企業文化として、権威に異議を唱えることを奨励せず、取締役会は幹部に対する効果的なチェック機能を果たしていないことが多いと付け加えた。

そんなキム容疑者は韓国・北東部潭陽(タミャン)郡に生まれ、貧困家庭で5人兄弟の3番目として、祖母の住む小さなソウルのアパートで育った。ほかの子供たちを養うため、父親は工場に勤務し、小学校しか出ていない母親はホテルのメイドとして働いた。

一方のキム容疑者は、アルバイトをして自ら貯めた学費で大学に進学。卒業後はサムソン電子でオンライン・コミュニケーション・サービスの開発者として採用され、1998年に独立。友人や家族から集めた18万4000ドル(約2800万円)で韓国発のオンラインゲーム会社ハンゲを立ち上げた。その後、2005年に米カリフォルニア州シリコンバレーに活動拠点を移し、2010年にカカオトークを開発。それが「IT帝国」カカオの基盤となった。同アプリは現在、韓国でスマートフォンの9割以上にインストールされているという。

一代で韓国有数のテクノロジー企業を築き上げたキム容疑者は絶賛された。米ブルームバーグ・ニュースによると、キム容疑者は一時、純資産が130億ドル(約2兆円)を超え、韓国長者番付1位になり、サムスングループのイ氏のそれを上回った。

カカオが開発した複数のアプリは現在、銀行業務や決済、配車サービス、地図、ゲームなど、韓国で重要な社会インフラとなっている。ところが、カカオは近年、事業の失敗や事故が相次ぎ、それに伴いキム容疑者の純資産はかつての130億ドルから36億ドル(約5563億円)にまで減少した。

2022年にはカカオのデータセンターで火災が発生。韓国全土で数日にわたって同社アプリの使用ができなくなり、一社独占の弊害に懸念が高まった。ユン・ソクヨル大統領は大規模な調査を命じ、当時のカカオの幹部は事故の責任を取って辞任しており、IT業界のみならず韓国財界にその波紋は広がっている。