外信コラム 「ありそうもない同盟」健康マニアとリバタリアンをつなぐ生乳

AI要約

ウィスコンシン州における未殺菌の生乳販売に関する問題。一部の酪農場が法に反して販売を行い、消費者に生乳の摂取を勧める状況がある。

酪農場での高病原性鳥インフルエンザウイルス感染拡大により、FDAが生乳の摂取を避けるよう呼びかける中、生乳の直売所では会員制や新規募集停止の措置が取られている。

共和党議員を中心に生乳販売合法化を巡る議論が行われており、民主党寄りやリバタリアンといった思想の違う立場が複雑に絡み合っている。

外信コラム 「ありそうもない同盟」健康マニアとリバタリアンをつなぐ生乳

米共和党が先日、全国大会を開催した中西部ウィスコンシン州は「米国の酪農地帯」と呼ばれる。州法で営利目的販売を禁じている未殺菌の生乳を、ひそかに販売する酪農場があると知り、党大会の取材の合間に直売所へ足を延ばした。

だが、商品の棚に生乳は見当たらない。話を聞いた店員は、カウンターの奥へ視線を送り、「会員になれば購入できるが、生産量が減る今の時期は新規募集をしていない」と説明した。

米国の酪農場では春先から、乳牛への高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1型の感染が拡大し、米食品医薬品局(FDA)は生乳を避けるよう消費者に呼びかけている。それなのに、店員が「健康にいいから」と常飲を強く勧めてきたのが印象に残った。

ウィスコンシン州と南部ルイジアナ州の議会では今年、生乳販売を合法化する法案が審議された。主導したのは、個人の自由を重視し、政府の介入を否定するリバタリアン(自由至上主義者)寄りの共和党議員。

ウィスコンシンでは廃案となった。他方、ルイジアナでは「ペット用」と明記する条件で可決され、購入者が自己責任で生乳を飲むのを黙認する形となった。

民主党寄りと思われた健康マニアとリバタリアンの共鳴を、英紙テレグラフは「ありそうもない同盟」と批評した。(平田雄介)