「何でもできる」感動も、ヒヤリ連発 テスラ「自動運転」車に乗ってみた

AI要約

米電気自動車(EV)大手テスラが提供する「完全自動運転」機能であるFSDサービスを記者が体験。安全性への懸念もある中、実際の運転や駐車時の機能などを詳細に報告。

アレックスさんの車でFSDサービスを利用し、機能の使い勝手や動作を確認。慎重な走行や適切な停止・発進、安全な車線変更などを実証。

道順や分岐点をミスせず、高速道路でも安定した走行を続けるFSD。オートパーク機能なども便利な機能として活用されている。

「何でもできる」感動も、ヒヤリ連発 テスラ「自動運転」車に乗ってみた

 米電気自動車(EV)大手テスラは、「フルセルフドライビング(FSD)」と称する運転支援機能サービスを北米で提供している。和訳で「完全自動運転」を意味するこの機能は、発進や停止、右左折などすべての操作を車が肩代わりするのが売りだが、安全性を巡る懸念も強い。実際どれほど使えて、危ないのか。記者が乗車し、確かめてみた。(時事通信社ニューヨーク総局 武司智美)

 協力してくれたのは、2022年にテスラのセダン「モデル3」を購入した会社員のアレックスさん(38)。24年6月のある平日、米ニューヨークのマンハッタンから電車で40分ほど離れたニュージャージー州のベッドタウンで待ち合わせし、愛車に乗せてもらった。

 アレックスさんは、ダッシュボード中央に置かれたiPad大の画面をタップし、FSDサービスを始めた。FSDは一括購入すると8000ドル(約128万円)かかるが、サブスクリプション(定額制)サービスも提供されている。定額サービスは当初月額199ドルだったのが、4月に値下げされ、半値の月額99ドル(約1万6000円)になった。

 行き先を設定し、いよいよ出発。と思ったら、駐車場の出口で止まったまま数秒間動かなくなった。出口の手前左側で、伐採した木の枝をまとめている作業員を検知して停止し、判断を迷っているようだ。作業員が木の枝を路肩に置いて視界が開けると、そろりそろりと進みだし、やっと路上に出た。「まるでおばあさんのように運転する」。事前のリサーチで聞いていた、そんな表現がぴったりな、やや慎重過ぎるとも言える動きだ。

 スタートは少々ぎこちなかったが、FSDは道路の形状に合わせて直進するのはもちろん、信号や標識に従って停止や発進を行った。他の車の流れを見ながら適切なタイミングで右左折し、車線変更もスムーズだ。交差点の見通しが悪かったり、車の流れがなかなか途切れなかったりする場合は、人間の運転と同様、少しずつ前にせり出して様子を見ながら進んだ。

 高速道路では、基本的に一定の速度で一定の車間距離を開けて走行。後ろから飛ばしてくる車が来た際に、わざわざ車線を変えて譲るという、まるで人間のような芸当も見せた。当たり前かもしれないが、道順や分岐点、出入り口を間違えることはなかった。

 駐車時の「オートパーク」(和訳で「自動駐車」)機能も便利だった。画面で駐車したい場所をタップするだけで、指定した区画に自動で駐車する。非常にゆっくりと動き、自転車や人が近づくと止まる。運転がうまい人からすると遅くていらいらするかもしれないが、一発で正確な場所に入れてくれた。