トランプ氏銃撃　集会で耳負傷　暗殺未遂で捜査　聴衆３人死傷し容疑者殺害

米東部ペンシルベニア州バトラーで１３日午後６時（日本時間１４日午前７時）過ぎ、１１月の米大統領選で返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領（７８）の演説中に何者かが銃を発砲した。トランプ氏は右耳を負傷したが命に別条はない。米大統領警護隊（シークレットサービス）によると、集会参加者１人が死亡、２人が重傷を負った。捜査当局は暗殺未遂事件として捜査を開始した。米メディアが伝えた。

報道によると、シークレットサービスがトランプ氏銃撃の容疑者を殺害、ライフルを押収した。発砲は複数回で、集会の会場外からだった。

トランプ氏は発砲直後、右耳を押さえながら演台の裏にしゃがみ込んだ。警備に当たっていたシークレットサービスが駆け寄ると立ち上がり、右拳を突き上げた。そのまま車両に乗り、会場を後にした。現場では聴衆から大きな悲鳴が上がった。

トランプ氏はソーシャルメディアで「右耳の上部を貫通する銃弾を受けた。大量に出血し、何が起きたか理解した」と述べた。当時の状況について「銃声などが聞こえ、銃弾が皮膚を引き裂くのを感じた」と説明。自身を安全な場所に退避させたシークレットサービスへの感謝を述べ、事件で亡くなった遺族に対し「哀悼の意」を示した。

トランプ氏陣営によると、大統領選候補を正式指名する１５日からの共和党大会にトランプ氏は参加する意向だという。

民主党のバイデン大統領は１３日、トランプ氏の暗殺未遂事件を受けて演説し、「米国にこのような暴力が許される場所はない」と強く非難し、トランプ氏と近く話す意向を示した。事件の「徹底的な捜査」を進める考えも示した。

バイデン氏は演説に先立って発表した声明で、「われわれは団結し非難しなければならない」と強調。「トランプ氏や彼の家族、集会に参加していた全ての人々のために祈っている」と述べた。

米ＣＮＮテレビは捜査関係者の話として、トランプ氏を銃撃した容疑者は集会の会場外にある建物の屋根の上にいたと報道。英ＢＢＣ放送は、現場近くの建物の屋上にライフル銃を持った男がいるのを目撃した男性のインタビューを放映した。男性は、銃を持った不審な男がいることを付近の警官やシークレットサービスに伝えたにもかかわらず、犯行を防ぐことはできなかったと語った。

Ｘ（旧ツイッター）上では、集会の参加者が撮影した動画や画像が大量に投稿されており、その中には、屋根の上で動かない状態になっている狙撃犯とみられる男の映像もある。

米国ではこれまでも大統領ら要人が暗殺の標的にされてきた。奴隷解放宣言で知られるリンカーン大統領は１８６５年、ワシントンで観劇中に撃たれて死亡。１９６３年にはケネディ大統領がテキサス州ダラス市内をオープンカーでパレード中、頭を銃撃されて死亡した。８１年にはレーガン大統領がワシントンで銃撃されたが、手術を受け一命を取り留めた。（ワシントン支局）