映画シーンのように…機内ビジネスクラスで捕まった232億ウォン麻薬密輸犯=韓国

AI要約

麻薬密輸組織の捜査官が逮捕に成功し、最後の運搬担当者を検挙した。組織員全員を包括的に逮捕し、232億ウォン相当の麻薬類を密輸した疑いが浮上した。

捜査官はタイでの潜伏捜査を通じて犯罪組織を追跡し、国際協力を活用して総責任者を特定し逮捕した。

麻薬捜査官の捜査技術と国際協力が強化され、最高検察庁も東南アジアなど他国との協力を重視している。

映画シーンのように…機内ビジネスクラスで捕まった232億ウォン麻薬密輸犯=韓国

先月11日午前4時52分、釜山(プサン)地検麻薬犯罪特別捜査チーム捜査官3人が仁川(インチョン)空港に着陸した飛行機に進入した。航空機の前側の出入口から入った捜査官らはビジネス席の前に立った。タイから麻薬類を国内に密輸して流通させた組織の最後の運搬担当チョ・ヨンハ容疑者(仮名、22)を検挙するためだった。

「チョ・ヨンハ、麻薬密輸容疑で逮捕します。弁護士を選任する権利があり、不利になる話は陳述を拒否する権利があります」。捜査官の告知にチョ容疑者は無言でうなずいた。チョ容疑者は検察の捜査網が狭まってくると、14カ月にわたるフィリピンでの逃避を終えて自ら入国した。チョ容疑者が捜査官に捕まって飛行機から降りる姿は映画『犯罪都市4』の最後のシーンを連想させた。

釜山地検が1年4カ月にわたる追跡の末、チョ容疑者を含め、タイから232億ウォン(約27億円)台の麻薬類を密輸した組織員全員を検挙した。釜山地検麻薬犯罪特別捜査チーム(チーム長ユン・グクグォン強力犯罪捜査部長)は密輸担当の責任者Aと海外から国内に麻薬を運搬した11人を検挙し、起訴したと9日、明らかにした。この麻薬密輸組織は2022年12月から昨年3月までタイから国内にヒロポンやケタミンなど麻薬類約6.8キロ(22万6000人分)を密輸し、流通させた疑いだ。

◆タイで潜伏捜査、協力で麻薬犯検挙

釜山地検特捜チームは2023年3月、ヒロポンを下着に隠して金海(キムヘ)空港に入った運搬担当の男2人を検挙し、この捜査を開始した。2人が所持していたヒロポンは約1.1キロで、3万人以上が使用できる量だった。事件を捜査したイ・ホンソク検事は「背後に大きな組織があるという心証があった」とし「特に職業がない男2人の密輸にしては相当な量であり、2人が出発したタイは最近国内への麻薬密輸が活発な国の一つだったため」と話した。

運搬担当の2人の携帯電話をフォレンジックして出てきた資料はイ検事の心証を確信に変えた。麻薬密輸に関する数百件の通信内訳と体に入れ墨をした男の顔の写真がアルバムからいくつも出てきた。イ検事はこの男が密輸の総責任者だと直感したという。数人が集まった写真で上席に座った姿が数多く見つかったからだ。運搬担当の男を追及したが、総責任者の存在は否認した。「ここで終わることはできなかった」というイ検事は運搬担当者の前科を照会し、似た犯罪前歴から総責任者と推定される男と似た容疑者を見つけ出した。

イ検事は「顔がとても似ていた。フォレンジックで取得した写真資料を基に最高検察庁に鑑定を依頼し、同一人物という評価を受けた」と話した。証拠を見せると運搬担当の男も認めるしかなかった。その後、繰り返し追及した末、総責任者がタイ・パタヤの高級マンションに隠れているという事実も把握した。

次の段階は国際協力だ。タイ現地に派遣された検察捜査官と個人メッセージで随時連絡を取り合った。総責任者の隠れ場所を正確に特定し、これを根拠にタイ麻薬庁と移民局に協力を求めた。タイの捜査機関も動いた。総責任者の住居地付近で4日間潜伏捜査をした末、男を検挙した。タイ政府が総責任者の強制追放を決定すると、釜山地検の捜査官はタイ・バンコクの空港に向かった。この総責任者は国籍機に搭乗するとすぐに検察捜査官に引き渡されて逮捕された。「国籍機であってこそ韓国の刑事司法権が及ぶ」とユン部長検事は説明した。

総責任者が捕まると、捜査はさらに進んだ。総責任者と運搬担当者が高校の同窓生であることが明らかになり、検挙された運搬担当者2人のほかに他の同窓生も麻薬密輸に加わったことが分かった。密輸犯の中には総責任者の元恋人もいたという。密輸犯らはタイで麻薬類を搬入するたびにその重量によって300万-1000万ウォンの報酬を受けた。総責任者が隠れていたタイ・バンコクの高級リゾートで旅行と観光を楽しんだりした。旅行の最後はいつも密輸だった。総責任者は密輸犯に太ももや下着などに麻薬を隠す方法を直接教えたという。

イ・ホンソク検事はタイ麻薬庁・移民局と協調して成果をあげたことが認められ、4日に最高検察庁が選定した2024上半期模範検事に選ばれた。イ検事は「麻薬捜査官の捜査技法とノウハウがあったため密輸組織の一網打尽が可能だった」と語った。

検察も麻薬捜査で国際協力を拡大しようと注力している。最高検察庁は東南アジア国家からの麻薬密輸が多い点に着眼して2012年にアジア太平洋麻薬情報調整センターを設立し、東南アジア10カ国との支援と協力を続けている。今年10月29日には第5回アジア太平洋麻薬情報調整センターワークショップが開かれる予定だ。

最高検察庁は「タイだけでなく麻薬類が主に流入する他の国とも円滑な協力捜査が行われるようにようにする。迅速な協力のために捜査官派遣拡大に取り組んでいる」と明らかにした。ユン部長検事は「凶悪事件は科学捜査技法を活用しないという誤解がある」とし「DNA分析や写真・映像鑑定などあらゆる手段を動員しながら今後も麻薬密輸組織を検挙する」と話した。