米アマゾン、中国系Temu・SHEIN対抗の新ストア計画

AI要約

アマゾンが低価格・ノーブランド品に焦点を当てた新しいオンラインストアを計画し、中国の販売業者を取り込む取り組みを強化している。

PDDホールディングスが手がける越境EC「Temu」とアパレル越境EC「SHEIN」が米国で勢力を強めており、アマゾンの成長を脅かす可能性がある。

アマゾンは中国企業の商品開発やブランド構築支援施設を立ち上げ、中国の販売業者との提携を強化する一方、独自の物流サービスを通じて顧客サービスの質向上に注力している。

 米アマゾン・ドット・コムが、衣料品や日用品専用の格安オンラインストアを、自社電子商取引(EC)サイト内に開設する計画だと、米メディアのジ・インフォメーションや米CNBCが報じている。中国の販売業者が米国の消費者に商品を直接販売・発送できる仕組みを用意する。米国で急速に人気を集める2つの中国系新興ECサービスに対抗する狙いがある。

■ アマゾンの新ストア、秋に商品の受け入れ開始

 CNBCによると、アマゾンはこのほど、中国の販売業者向けイベントを開催した。CNBCが入手したプレゼンテーション資料によると、アマゾンは米国で低価格・ノーブランド品に焦点を当てた新しいオンラインストアを計画している。品ぞろえは、衣料品のほか、家庭・美容用品などで、大半の価格は20ドル(約3200円)以下になるとしている。

 新ストアの開設時期は明らかにしていないが、資料によるとアマゾンは2024年夏に業者の登録受け付けを開始し、秋に商品の受け入れを始める予定だ。

 アマゾンの広報担当者、マリア・ボシェッティ氏は「より多くの選択肢、より低い価格、より高い利便性を提供するために、販売パートナーと新しい協業方法を模索している」とコメントしている。

■ 勢い増す中国系EC「Temu」と「SHEIN」

 アマゾンが中国販売業者の取り込みに力を入れる背景には、米国で勢力を強める2つの中国系新興ECサービスの存在がある。

 中国でネット通販「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」を展開するPDDホールディングスが手がける越境EC「Temu(テム)」と、アパレル越境ECを手がける「SHEIN(シーイン)」である。

 Temuは22年秋に米国でサービスを始めた。米調査会社のセンサータワーによると、それ以降若年層を中心に利用者が増え、月間アクティブユーザー数は24年1月に5140万人へと増加した。SHEINの月間アクティブユーザー数は同じ期間に、2090万人から2600万人へと増えた。今後アパレル分野でアマゾンの成長を妨げる可能性があると指摘されている。

 アマゾンと、これら2つの新興ECには決定的な違いがある。アマゾンは顧客に最も近い場所に在庫を配置し、配送の迅速化とコスト削減を図っている。それを実現するため、販売業者に「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」と呼ぶ物流サービスを利用してもらっている。これはアマゾンが商品を預かり、倉庫保管や梱包、出荷、配送業務などを代行するというものだ。これにより年40億個以上の商品を注文の当日または翌日に配達している。

 これに対しTemuとSHEINは、基本的に米国の倉庫に大量の在庫を置かず、注文が入る都度、中国から輸入する。配達までの期間は延びるが、それを格安価格で補っている。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、TemuとSHEINは、待つことをいとわない顧客が存在することを見いだし、低価格戦略でEC巨人に対抗している。

■ アマゾンECで重要度増す中国業者

 だが、今度はアマゾンがこれら中国系ECに対抗する。中国を拠点とする販売業者はアマゾンのマーケットプレイスにおいて重要な役割を担っている。アマゾンは23年、中国業者による同社サイトでの販売個数は前年比で20%以上増加し、1000万ドル(約16億円)以上の売り上げを達成する中国業者は30%増加したと明らかにした。

 米国市場におけるTemuやSHEINとの競争が激化するなか、アマゾンは中国の販売業者を引き付けるための取り組みを強化している。今回の新ストア計画もその一環だ。CNBCによると、アマゾンは23年12月、中国・深圳市近郊で「イノベーションセンター」を開設すると発表した。この施設で中国企業の商品開発やブランド構築、DX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する計画だ。