エムバペ選手も“警告”…極右政党3位転落の背景に「極右躍進への警戒感」 フランス総選挙で左派連合が最大勢力に

AI要約

フランスの国民議会総選挙の決選投票で極右政党「国民連合」が第3位に後退した理由について。移民問題とマクロン政権への不満が極右支持につながった背景を解説。

極右支持に歯止めをかけるために左派と与党連合が選挙協力を行なったことと、市民の極右に対する警戒感が極右敗北につながったこと。

スポーツ界のスーパースターからの極右警戒の声が影響を与え、極右の失速につながった要因とされる。

エムバペ選手も“警告”…極右政党3位転落の背景に「極右躍進への警戒感」 フランス総選挙で左派連合が最大勢力に

7月7日、フランスの国民議会総選挙の決選投票が行われ、1回目の投票で第一党に躍進した極右「国民連合」が第3位に後退した。その背景には、左派と与党連合が選挙協力を行なったことに加え、「極右躍進への市民の警戒感」が“極右への期待”を上回ったことがあったとみられる。

圧勝とみられていた極右政党「国民連合」が第3位まで転落したということだが、そもそもなぜ極右政党がフランスで支持を集めていたのか。

国民連合は70年代からある古い政党で、反EU、反移民の立場をとってきた。“泡沫の政党”だったが、2014年頃から急激に支持を伸ばし始めた。そして、2015年にパリで移民2世による同時多発テロが起き、国民連合は移民の増加が治安の悪化に繋がったと主張し、反移民をスローガンに大きく勢力を拡大した。

2022年にはパリ中心部で「外国人は嫌いだ」という男がクルド系の市民を銃撃し3人が死亡、これが大規模な暴動も引き起こすなど、移民を巡るトラブルが散発的に起きてきた。こうした状況に不安を抱く国民も大勢いるという。

フランスにおける移民の人口は年々増えていて、ドイツの調査会社によると2022年には人口の10.3%を占めている。「移民の増加により町が危険になった」また「職が奪われる」などの声も一部の市民に根強くある状況だ。

これに物価の高騰や年金などマクロン政権への不満も重なり、極右ヘ追い風となった。そして事実上のリーダーで前党首のマリーヌ・ルペン氏のもとで、極端に過激な政策は取りやめ、より多くの市民に支持を広めて、第一党をうかがうまでに伸びてきた。

今回の選挙では失速し第一党にはなれなかった国民連合だが、その背景には極右を阻止するためにマクロン氏の中道派と左派のメランション氏が選挙協力を行なったことがある。ただそれ以上に、「極右躍進への市民の警戒感」が“極右への期待”を上回ったといえる。

パリ中心部のレピュブリック広場には7日、数え切れないほどの市民が集まり、大きなフランス国旗が掲げられ、花火をあげたりと、左派の勝利と極右の敗北を祝っていた。市民の間には極右を食い止めたことの安堵感が広がっていて、これだけ人が集まることは極めて異例だともいえる。

そして、影響力のあるスポーツ界のスーパースターからも極右躍進を警戒する声が上がり、今回の極右の失速にも繋がったと考えられている。

サッカーフランス代表のキリアン・エムバペ選手(25)は、第1回投票で極右が圧勝した後、ヨーロッパ選手権での準々決勝前の記者会見で「最悪」と発言。「これまで以上に投票に行く必要がある。これは緊急の状況だ。国をこのような人々の手に渡すわけにはいかない」と、第2回投票で極右の勝利を食い止めるよう呼びかけていた。

エムバペ選手は、両親がカメルーンやアルジェリアのルーツを持っており、極右の移民政策に強い危機感があったと思われる。エムバペ選手の生まれたパリ郊外の町でも、多くの市民の支持する声が聞かれた。

今後の議会運営だが、選挙協力はしたものの、政策的にはマクロン氏の「与党連合」と第一党となった左派「新人民戦線」の主要政党とは大きな隔たりがあり、連立などはほぼ不可能だといわれている。18日からは議会が始まるが、どういう形になるかまだ見えない。

(「イット!」 7月8日放送より)