環境保護訴えた若者に禁錮刑、活動家の脅迫や訴追 カンボジアで強まる圧力

AI要約

東南アジアのカンボジアで、環境保護団体の活動家が実刑判決を受ける事件が発生。

活動家は中国資本の水力発電ダム計画を阻止した実績を持ち、政府から非難されている。

環境保護団体の活動家に対する有罪判決が環境問題や人権侵害を巡る激しい議論を巻き起こしている。

環境保護訴えた若者に禁錮刑、活動家の脅迫や訴追 カンボジアで強まる圧力

(CNN) 豊かな自然や天然資源に恵まれた東南アジアのカンボジアで、環境保護を訴え、権力者や当局者の腐敗を指摘してきた若者の団体「マザー・ネイチャー・カンボジア」の活動家10人が国家に対する陰謀罪などに問われ、最大で禁錮8年の実刑判決を言い渡された。

同団体は2015年、手つかずの熱帯雨林が破壊されると訴えて中国資本の水力発電ダムの計画を阻止した実績をもつ。

政府は同団体のメンバーらが社会不安をあおったとして非難。一方支援者らは、カンボジア各地で環境保護活動家が攻撃されていると主張する。

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんが創設した若者主導の環境保護団体フライデーズ・フォー・フューチャーは、「マザー・ネイチャー・カンボジアの友人と、政治犯全員の即時釈放を要求する」との声明を発表した。

亡命中の野党指導者ムー・ソクア氏は同団体について、カンボジアの繊細な環境を脅かす問題に脚光を浴びせていたと語り、「自由国家であれば英雄になっていただろう」と指摘。活動家に対する有罪判決は「カンボジアの裁判所が公の対話を中断させるための武器として利用されている現実を見せつけた」とCNNに語った。

天然資源に恵まれたカンボジアの自然は、違法な森林伐採や農業の拡大による森林破壊、内陸部や沿岸部の水質汚染、プラスチックごみの急増などに脅かされている。

米国際開発局(USAID)によると、国土は約46%が森林に覆われ、植物2300種と絶滅危惧動物14種が生息する。

ロイター通信によると、2日の判決言い渡しを前に、政府の報道官は裁判所前で、活動家の起訴に政治的動機はないと述べ、「批判に対して政府が行動を起こしたことはない。犯罪を実行した者に対しては行動を起こす」と強調した。

2012年に創設されたマザー・ネイチャー・カンボジアは環境破壊に対する反対運動を展開し、国家の鉱物資源管理に腐敗があったと訴えてきた。

23年にはもう一つのノーベル賞とも呼ばれる「ライト・ライブリフッド賞」を受賞している。

しかし活動家のうち数人は、カンボジアの裁判所が渡航を認めなかったため、スウェーデンで開かれた授賞式に出席できなかった。

SNSを積極的に利用して若者の共感を集める同団体は、フェイスブックで45万人以上がフォローする。ここ数年はティックトックの動画を通じ、希少資源の違法な輸出やホテルやカジノなどの違法建築を訴えてきた。手つかずの熱帯雨林が残る南西部のアレン渓谷では、中国資本の水力発電ダムに対する反対運動を展開して建設を阻止している。

首都プノンペンの高校生は「前向きで明るくて、環境についてたくさんのことを教えてくれる」と同団体を評価する。

しかし同団体のメンバーが脅迫や嫌がらせを受けたり、訴追されたりするケースも増えている。

判決言い渡しの2日には、同団体のメンバーらが裁判所前で葬列に見立てたデモ行進を行い、「司法は死んだ」と書かれたプラカードを掲げた。

しかし判決が言い渡されると一転、現場は混乱状態に陥り、活動家5人は大勢の武装警官に取り囲まれて車に押し込まれ、国内各地の刑務所に連行された。

残る5人にも逮捕状が出された。うち1人は陰謀罪や国王を侮辱した罪で禁錮8年を言い渡されている。