【独自】病院で手足と胸を縛られ10日…死してようやく解放された患者=韓国

AI要約

手足と胸をきつく縛られた患者が死亡した春川の精神病院事件の実態と過失が暴露された。

患者は適切な救護を受けず、死亡するまで縛られ続けた悲劇が記録映像で明らかになった。

警察や病院関係者の責任が問われ、事件の再調査や裁判を求める遺族の声が高まっている。

【独自】病院で手足と胸を縛られ10日…死してようやく解放された患者=韓国

 

<編集者:手足と胸をきつく縛られる。患者はまるで十字架にかけられたようにベッドに縛られ、横になっている。299病床の小さな精神病院、春川(チュンチョン)〇病院で、その患者が救われることはなかった。ハンギョレが入手した防犯カメラの映像では、患者は毎日うめき声を上げ、苦しみもがいて徐々に死んでいった。医師も、看護師も、保護士も適切な救護措置を無視した。映像に登場するすべての人物がその死の同調者のように見える。

 精神病院は精神障害を治療する場所だ。しかし、治療という名のもとに人を縛り付けて放置するという拷問に近いことが、今もどこかの精神病院で起きているかもしれない。ハンギョレは3回にわたって精神病院の隔離や拘束の実態を告発し、代案を模索する。>

 朝7時33分、男性が4人の保護士によって毛布に巻かれて運び出された。まるで荷物が運ばれているようだ。死してようやく男性は解放された。10日以上、手足と胸をベッドに縛り付られたまま、保護室に横になっていたのだ。沈黙の訪れたがらんとした病室では、防犯カメラ(CCTV)だけが点滅していた。

 2時間前、男性は生きていた。いや、生きるために全力を尽くしていた。午前5時34分、男性は上半身を起こそうとした。身動きが取れなくて大声をあげた。5時42分57秒までは口を動かして何かを言っていた。一人で話し、そして話すのをやめなかった。腹で息をし、そして吐き出した。10分前の5時33分には看護師が入ってきてしばらくその場にいたが、男性が訴えても何ら措置を取らなかった。看護師はすぐに出てゆき、男性は頭を上げてその後ろ姿を見つめた。

 2022年1月8日朝、春川〇病院の閉鎖病棟の保護室(鎮静室)で、精神疾患の他にはこれといった疾患のなかった人物が死亡した。両手、両足、胸の5カ所を縛られた状態(五点拘束)で隔離入院していたキム・ヒョンジンさん(仮名、45)だった。緊急入院で入院したヒョンジンさんは、289時間20分の入院期間のうち251時間50分をベッドに縛り付けられており、結局は死亡した。

 このようなヒョンジンさんの死は2年5カ月もの間、世に知られていなかった。その背景には病院の徹底した隠ぺい、警察の消極性と手抜き捜査があった。病院は遺族の許可なく遺体を23キロ離れた斎場の冷凍庫に移し、遺族に死亡を通知したのは2時間たってからだった。死亡通報を受けて出動した警察は、わずか3時間半で事件を「病死」として終結処理した。遺族は病院の4人の医療スタッフを業務上過失致死などで告訴したが、これも警察は7カ月で嫌疑なしとして終結した。

 ハンギョレは1日、遺族から確保した防犯カメラの4067本の映像(67.1ギガバイト)を分析した。映像には、78時間30分間の最初の拘束を皮切りとして、計5回ベッドに縛られたヒョンジンさんが映っていた。保健福祉部の隔離・拘束指針によると、19歳以上の成人の1回の最大拘束時間は4時間(連続8時間)。規定違反の拘束は続いたが、まともな看護や救護措置はなかった。むしろ病院は、次第に拘束時間を増やしていった。そして5回目の拘束が66時間50分に及んだ時、ヒョンジンさんは死亡した。

 精神病院で拘束された患者が死亡したのは今回が初めてではない。2005年には連続124時間縛られていた50代、2013年には17時間縛られていた70代が死亡しており、2017年には35時間縛られていた20代が死亡して社会的に問題となった。しかし、ヒョンジンさんのように遺族の努力で「精神病院の死の記録」が映像でありのまま暴露されたのは、今回が初めてだ。

 何の問題もないと言っていた警察は、国家人権委員会(人権委)の捜査依頼を受けてようやく、今年3月に8人の看護師を医療法違反で送検した。病院長、主治医、当直医は送検されなかった。春川地検は4月に8人の看護師に対する1人当たり30万ウォンの罰金の略式命令を下すよう求め、裁判所は6月に処分を最終確定した。犯罪の程度が軽いため、正式な裁判を経ずに罰金30万ウォンを宣告するよう求めたということだ。キムさんの元妻のパク・チウンさん(仮名)は、「CCTVを見ると、病院は殺害現場であることが分かる。しかし誰もまともに処罰されていない」と語った。

 パクさんと息子のキム・ジンスさん(仮名、21)は、病院長や主治医らを殺人罪などで改めて告訴する予定だ。保健福祉部は最近、〇病院死亡事件について、管理・監督責任を持つ春川市に事件の再調査を要請している。

コ・ギョンテ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )