仏総選挙、30日に第1回投票 極右政党が優勢、過半数の確保が焦点

AI要約

フランス国民議会選挙の第1回投票が30日に行われ、極右政党「国民連合」が支持率トップで過半数獲得が期待される。

国民連合は国内政策に重点を置き、税制改革やエネルギー政策の見直しなどを公約している。

選挙結果によっては極右首相誕生や、異なる政党の大統領と首相による「コアビタシオン」も視野に入れられている。

仏総選挙、30日に第1回投票 極右政党が優勢、過半数の確保が焦点

 フランス国民議会(下院、定数577)選挙の第1回投票が30日、行われる。今月上旬の欧州議会選で躍進し、世論調査で優勢を維持する極右政党「国民連合」が過半数を獲得できるかが焦点となっている。

 世論調査会社「トルナ・アリス・インタラクティブ」が26日発表した調査結果によると、国民連合は支持率34%で首位に立つ。230~270議席の獲得が予想され、過半数に迫る勢いだ。左派連合の「新人民戦線」が支持率27%で続き、125~155議席を獲得する見込み。マクロン大統領率いる与党連合は支持率21%の3位で、予想獲得議席数75~125に沈んでいる。

 国民連合はウクライナ支援や欧州連合(EU)関連などの対外政策よりも国内政策に重点を置く。バルデラ党首はウクライナ支援の継続を表明しているが、長距離ミサイルの供与やウクライナ兵を訓練するための仏軍派遣には反対の姿勢を取っている。

 同氏は17日付パリジャン紙のインタビューで、電気料金やガソリンなどの燃料の付加価値税(日本の消費税に相当)を現行の20%から5・5%に引き下げる考えを示した。税収を補うため、EUへの負担金の支払いを削減するとした。「(フランスへの)移民の促進につながる政府支出」も削減の対象とし、エネルギー政策では風力発電所の建設計画を縮小して原子力発電所の新設を進めるという。

 これに対し、新人民戦線は移民に寛容な政策が特徴だ。非正規移民を対象とする海上救援隊を創設し、ビザ(査証)発行の簡易化も公約。ウクライナ支援では武器供与やウクライナの対外債務の免除、同国内の原子力発電所への警備部隊の派遣などを進める。

 一方、与党連合はウクライナへの武器供与を継続するとともに、自国の国防費を2030年までに倍増させる計画だ。冬期の電気料金の引き下げや、地球温暖化対策に1兆ユーロ規模の投資、フランス入国前に移民の状況を審査する機関の設置や国境警備隊の増員なども掲げる。

 第1回投票で各選挙区の有効投票の過半数を得た候補が当選を決め、決着がつかない場合は上位2候補と投票数の12・5%を上回った候補が7月7日の決選投票に進む。国民連合が勝利すれば、極右の首相が誕生する可能性が濃厚になる。

 大統領は通常、決選投票で投票数が最多の政党から首相を指名し、首相が閣僚を指名する。第1党が単独か、他党との連立で過半数を獲得すると議会の運営が比較的安定する。ただ、1997年から02年までのシラク大統領(右派)、ジョスパン首相(社会党)以来22年ぶりに、大統領と首相の政党が異なる「コアビタシオン」と呼ばれる状況が生まれる可能性がある。

 フランスでは大統領は主に外交、国防、首相は予算編成など主に内政を管轄するが、両者や政党間の意見の相違で審議が停滞する懸念も指摘されている。

 フランスではこうした「ねじれ」を防ぐため、00年に大統領の任期をそれまでの7年から下院議員と同じ5年に短縮し、大統領選直後に総選挙を実施してきた。だが今回は欧州議会選での大敗を受け、マクロン氏が解散、総選挙に踏み切った。【ブリュッセル宮川裕章、岡大介】