「4歳の少女が砲撃でバラバラに」...抗議活動を決行した女性のもとに15分で駆けつける、ロシア当局の「ヤバすぎる監視の真実」

AI要約

ウクライナ戦争勃発後、ロシアの政府系テレビ局に乱入した女性ジャーナリストの行動が国内外で物議を醸した。彼女はプロパガンダに加担するメディアに疑問を投げかけ、反戦ポスターを掲げて抗議活動を行った。その後、彼女は国内で追い回されることになるが、決死の国外脱出までの壮絶な戦いも繰り広げられる。

ロシア軍の空爆により子供たちが犠牲になった悲劇を目にした女性ジャーナリストは、孤立無援と絶望の感情に襲われる。その後、自らが抗議活動を行い、沈黙は犯罪の共犯であると訴える決意をする。

友人の支援を受けながらモスクワで抗議活動を行う女性ジャーナリストの物語。経済制裁により困難に直面する友人も彼女を支え、共に戦いを続ける。

「4歳の少女が砲撃でバラバラに」...抗議活動を決行した女性のもとに15分で駆けつける、ロシア当局の「ヤバすぎる監視の真実」

 「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。

 ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。

 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。

 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第33回

 『「お前は祖国が嫌いなのか?」...神経性発作まで追い込まれた女性ジャーナリストへの止まらない「誹謗中傷」ロシア秘密警察の「残酷すぎる黙らせ方」』より続く

 娘の声がわたしの考えをさえぎった。

 「夕食はオーブンでピザを焼こうよ」

 「いい考えね」わたしは冷蔵庫の中を覗いた。「トマトはある。ソーセージもある。チーズもオリーブもあるわ」

 ベリーが尻尾を振りながらテーブルに寄ってきてわたしの目をのぞき込んだ。わたしはソーセージを切ってベリーの口元に持っていった。ベリーはあっという間に飲み込んだ。

 わたしはトマトを切り、娘がそれを生地に載せた。わたしたちの運命に降りかかった試練のあとで、ようやくわたしたちは一緒になったのだ。

 この時、ロシア軍はヴィンニツァ(ヴィンヌィツァ)を空爆していた。一発の砲弾が町の中心に命中した。20人以上の民間人が死亡し、その中にはお日様のような4歳の女の子リーザがいた。ベビーカーに乗ったリーザの小さな体は砲弾でバラバラになり、リーザのママは片足をもぎ取られた。

 夜、わたしはこの悲劇をニュースで読み、心が砕け散った……。

 孤立無援と絶望の感情に捕らわれた。誰がこの小さな女の子をお母さんに返すことができるのか。誰が両親に、死んだ子供たちを返してやれるだろうか。

 翌日、わたしは一人で抗議活動を決行することに決めた。

 「行っちゃだめ。だめよ。逮捕されるわ」電話口でクリスティーナが叫んだ。

 「子供が殺されてるのに、わたしは一人で抗議活動もできないの?」わたしも叫び返した。「沈黙は犯罪の共犯よ。ロシアでは一人での抗議活動は禁止されていないわ」

 「わかってる。あなたを説得することは無理だってことは。わたしも一緒に行きます」

 クリスティーナはこの時、モスクワに滞在していた。特別休暇を取って友達とサマラから来ていたのだ。クリスティーナが働いている物流会社は、経済制裁で倒産の瀬戸際だった。注文はほとんどなかった。

 「モスクワにいるのなら、うちにくれば」わたしはそう言った。