忘れるべきでない「ふたつの戦争以外の戦争」。世界で起きている争いは《ロシア・ウクライナ戦争》《イスラエル・ハマス戦争》だけじゃない――。

AI要約

ロシア・ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス戦争が報道される中、世界各地で報じられない戦争や紛争が続いている。

戦争の形はさまざまで、国対国の戦争だけでなく内戦や非対称戦も存在する。

国連PKOによる平和維持活動が世界各地で続いており、戦争の背後には複雑な利害関係が絡んでいる。

忘れるべきでない「ふたつの戦争以外の戦争」。世界で起きている争いは《ロシア・ウクライナ戦争》《イスラエル・ハマス戦争》だけじゃない――。

依然、泥沼の戦闘が続くロシア・ウクライナ戦争。犠牲者が増え続けているイスラエル・ハマス戦争。このふたつの戦争については毎日報道されているが、ニュースで取り上げられない戦争も起きている。というのも、現在も終わっていない戦争・紛争が地球上に30から50はあるといわれているのだ。忘れるべきでない主な戦争・紛争を紹介していく。

■報じられる戦争と報じられない戦争

すでに開戦から2年以上を経たロシア・ウクライナ戦争と、子供などの一般市民を含む3万7000人を超える死者を出しながらいまだに停戦の兆しすら見えないイスラエル・ハマス戦争。

連日、このふたつの戦争のニュースを目にしない日はないほど戦争のある日常が当たり前になりつつあるが、実はこのふたつの戦争以外にも世界各地では戦争や戦闘が続いている。

「ウクライナやガザの戦争が連日メディアで報じられ、人々の関心を集める一方で、世界には多くの忘れられた戦争が存在します」

そう語るのは、平和構築学が専門で、長年シエラレオネや東ティモール、アフガニスタンなどの紛争解決に取り組んできた、東京外国語大学名誉教授の伊勢﨑賢治氏だ。

「『戦争』という言葉に、多くの人はロシアとウクライナのような"国対国"の戦争を想像するかもしれません。しかし、戦争にはそれ以外にも、国の中で対立する勢力が戦う『内戦』や、『イスラム国』(IS)のように実際には"国"としての形を持たないテロ組織などを相手にした『非対称戦』と呼ばれる戦争もあり、ひと言で戦争・紛争といっても、その形はさまざま。

また、隣の朝鮮半島が典型的な例ですが、今は北朝鮮と韓国の間で日々の戦闘や衝突が起きていなくても、現実には戦争自体が終結しておらず、国連軍や国連PKO(平和維持活動)などによる監視の下で、辛うじて停戦が続いている地域も少なくありません」

ちなみに、日本では自衛隊のアフガニスタン派遣以降、国連PKOに関する話題はあまり耳にしないかもしれないが、アフリカでいえば西サハラやコンゴ民主共和国、スーダン、南スーダン、アジアでも中東のゴラン高原やレバノン、インド・パキスタン国境、ヨーロッパのキプロスなどの地域では、現在も国連PKOによる平和維持ミッションが続いているという。

「もうひとつ非常に重要なポイントが、現代の戦争・紛争では直接の当事者だけではなく、その背後にいる国や勢力の存在と利害が複雑に絡み合っているという点です。

戦争当事国ではない国に暮らしていると、遠い場所で起きている戦争と自分のつながりを実感するのは簡単ではありません。しかし、複雑化した戦争の背景を考えると、実は、戦争とまったく無縁の人など存在しないのです」