【コラム】中国、パンデミック以前より在庫11%増加…産業好況の裏面の影

AI要約

米国と欧州が中国の過剰設備・生産を問題視し、関税障壁や人民元の上昇を検討している。中国経済は成長目標達成のために先端製造業に注力し、在庫が増加しているが内需不振や企業の収益率低下も懸念されている。

中国の製造業高血糖が世界経済に悪影響を与える可能性が指摘されており、米国や欧州は積極的な対応策を探っているが、現在の国際情勢では難しい状況にある。

中国経済が過剰設備や生産によるリスクに直面しており、今後の展望が不透明である。内需不振や企業の業績悪化が続く中、中国経済が危機を迎える可能性もある。

デジャヴュ(Deja Vu)だ。米国が1980年代後半に日本と貿易戦争をしながら叫んだ「過剰設備」と「過剰生産」という言葉が、一世代(約30年)の時差を置いてまた響いている。今回の相手は中国だ。過剰を叫ぶ側は米国や欧州などだ。

中国の過剰設備・生産が国際経済と政治領域でアジェンダに浮上したのは、今年4月にあったイエレン米財務長官の訪中の前後だ。イエレン長官は中国訪問の前、「私たちは太陽電池、電気自動車バッテリー、電気自動車産業を育成しようと努力するが、中国の大規模投資がこの分野で過剰設備と生産を誘発している」と批判した。そして訪中期間には繰り返し過剰生産の問題点を指摘した。あたかも経済学科の教授が教えるという態度まで表した。その後、米国だけでなく欧州国家も中国の過剰生産と輸出を問題にした。

◆米国、中国の「製造業高血糖」心配

イエレン長官の批判に根拠がないわけではない。最近、中国の近平国家主席は経済成長目標(5%)を達成するため、不動産開発の代わりに産業生産、特に先端製造業の育成を成長エンジンに選択した。都市銀行など金融機関を動かして先端製造業に資金を向かわせている。都市銀行は不動産の部分融資をこの1年間に1兆元(約21兆円)ほど回収した。半面、中国でグリーン融資と呼ばれる環境産業への融資は同じ期間に8兆元増やした。これに関連し米国の「通貨政策野戦司令部」ニューヨーク連邦準備銀行が「中国の製造業血糖が高まれば?」という報告書を出した。

ニューヨーク準備銀行は金融機関であるためか、米国の貿易収支悪化だけを懸念したのではない。さらに一歩すすんで中国の製造業高血糖がインフレ悪化につながると警告した。報告書によると、グローバル製造業生産で中国が占める比率は約30%だ。こうした中国の製造業が糖分(金融支援)で活力を帯びれば原材料の輸入が大きく増える。中国発の原材料需要急増は原材料とエネルギーの価格を引き上げ、結局、米国内の物価を圧迫する。「個人消費支出(PCE)物価指数を基準に2025年にインフレーションが0.5%ポイントほど高くなる」というのがニューヨーク準備銀行の予測だ。

◆妙案がない米国

米国が中国製造業の高血糖に対応できるカードは関税障壁を高めて人民元を上昇させる方法だけだ。80年代半ば、米国は日本とドイツに圧力を加え、日本円と独マルクを高くしてドルを安くする作業をした(プラザ合意)。さらに米国は日本を追い込んで「過剰生産と輸出に対する自律規制」をさせた。

しかし米ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のジェフリー・ショット首席研究員は数年前、中央日報の電話インタビューで「80年代の米国は安保の傘を前に出して日本とドイツに圧力を加え、プラザ合意と自発的規制を引き出すことができた」とし「しかし今は中国を動かせるテコがほとんどない」と話した。

実際、トランプ前大統領が関税障壁を築いたが、「メードインチャイナ」はメキシコ、カナダ、バハマなどから米国市場に入っている。国際関係で妙案がない時に声だけが高まるというが、11月の大統領選挙を控えて中国の「過剰設備、過剰生産」という声が特に高まっている。

◆内需不振で積もる在庫

そのためか、中国の製造業高血糖が実際に過剰生産につながっているかを問いただすのは後まわしだ。英国の経済分析会社オックスフォードエコノミックスの最近の報告書によると、中国の産業生産は過剰と見なしがたい水準だ。パンデミック以前と比べて3%ほど増えたにすぎない。報告書を書いたルイス・ルー中国担当研究員は「一時的な過剰生産と呼ぶことができる水準」と評価した。驚く事実は、パンデミック以前に比べて産業生産がわずか3%増えただけだが、在庫は11%も増えたという点だ。中国企業の物流倉庫に在庫が積まれているということだ。

国内総生産(GDP)を計算する際、在庫は投資として反映される。それだけ成長率が高まる。中国企業が金融支援を受け、生産設備よりも従来の設備を動員して在庫を増やしたということだ。専門家らは産業生産増加率より在庫増加率が4倍近く高い最初の理由に中国の内需不振を挙げる。そして中国産の輸出が期待ほど増えていないのも在庫増加の理由という。

◆中国企業の心配

実際、中国経済が過剰設備・生産症状を見せているのは昨日今日のことでない。専門家らは在庫を累積させる需要不足を懸念している。企業の売上高に対する純利益率など実績指標が悪化するからだ。実際、中国全体産業の売上高に対する純利益率は2021年以降6%以下に落ちた。製造業の売上高に対する純利益率はさらに低い5%水準だ。企業が資産をどれほど効率的に活用しているかを表す指標、資産に対する収益率(ROA)も2017年以降の最低水準になった。

歴史的に在庫累積がもたらした最悪の結果は1929年の米国の大恐慌だ。それでも中国の現在の在庫累積が最悪に向かうということではない。ただ、内需不振の中で輸出までが順調でなければ中国経済が危機を迎えるおそれがある。習近平主席が不動産の代わりに成長エンジンで選んだ環境・最先端産業でもう一つの過剰が生じているということだ。

カン・ナムギュ/国際経済記者