続く経済拡大、世界で台頭 世俗主義後退指摘も インド

AI要約

モディ政権が10年間で高い経済成長を達成し、世界5位の経済大国に成長した。一方、強権化とヒンズー至上主義が進み、世俗主義の後退も指摘されている。

モディ首相はインドを世界3位の経済大国にすることを目指し、国力増大を背景に新興国のリーダーとして行動。しかし、ヒンズー教徒優遇政策や宗教間の対立が深まる中、分断が進んでいる。

政敵への圧力や情報機関による暗躍など、強権化が進む一方で、世界最大の民主主義国としてのインドの行方に内外から懸念と注目が集まっている。

 【ニューデリー時事】インドはモディ政権発足後の10年間で高い経済成長を達成し、新興・途上国「グローバルサウス」の代表格として国際社会で存在感を高めた。

 一方、内政面では「強権化」への懸念に加えて、ヒンズー至上主義的な性格を強め、国是とされてきた「世俗主義」が後退したとも指摘されている。

 インド人民党(BJP)が政権を奪回した2014年に世界10位前後だった経済規模は、現在5位にまで膨らんだ。14億人超という世界最大の人口の旺盛な内需に支えられ、政府が発表した23年度の成長率は8.2%と高水準を維持。25年にも名目GDP(国内総生産)で、4位の日本を抜くとの予測もある。

 モディ首相は、次の5年間でインドが米国、中国に次ぐ「世界3位の経済大国になる」と、折に触れ訴えてきた。

 国力増大を背景に、近年は新興国のリーダーとして振る舞うようにもなった。ロシアとの伝統的な友好関係を維持しつつ、日米豪印の枠組み「クアッド」の一角を占めるなど、西側諸国も安全保障パートナーとして重視。「大国インド」を導くモディ氏の強い指導者としてのイメージが、与党の支持につながっている側面も大きい。

 一方、人口の約8割を占めるヒンズー教徒のみを重視するような政策を次々に実行。ヒンズー教徒と少数派のイスラム教徒の間で暴動や襲撃も起きており、宗教間の分断は深まるばかりだ。BJPの支持母体であるヒンズー至上主義団体・民族義勇団(RSS)出身のモディ氏は、選挙戦でイスラム教徒を「侵入者」と表現して波紋を広げた。

 また、捜査機関を使って政敵や政権に批判的な記者に圧力をかけるなど、強権化が進んでいるとの指摘も。米国に滞在するシーク教徒の男性の暗殺を計画するなど、インドの情報機関が友好国で暗躍しているとも報じられた。「世界最大の民主主義国」の行方には、内外から懸念と注目が集まっている。