モディ政権、多難な3期目 高失業率やヒンズー教優遇に強い不満

AI要約

モディ首相率いるインド人民党(BJP)を中心とする与党連合が過半数を獲得し、モディ氏はグローバルサウス(GS)の盟主としての地位を確立した。

一方、国内では経済成長はあるものの、高失業率や物価高騰といった課題が山積し、若者たちの雇用不安が深刻化している。

与党はヒンズー教徒の支持を得ようとする一方で、成長の恩恵を受けられない有権者の不満も高まっており、課題に立ち向かう必要がある。

モディ政権、多難な3期目 高失業率やヒンズー教優遇に強い不満

4日開票のインド総選挙では、モディ首相の与党、インド人民党(BJP)を軸とする与党連合が過半数を維持する見通しとなった。モディ氏は信任を得たとして、グローバルサウス(GS)と呼ばれる新興・途上国の盟主、さらに〝次の超大国〟としてのインドの地歩を固めたい考えだ。だが、高い失業率など課題は山積。ヒンズー教徒優遇への不満も強く、3期目の歩みは平坦(へいたん)ではなさそうだ。

■「GSの盟主」の座

「世界はインドの地位がわずか10年でどれほど高まったかを目撃している」。モディ氏は選挙戦で、国際社会でのインドの存在感が首相在任10年間で飛躍的に高まったと繰り返し強調した。

モディ氏の自信を支えるのは経済成長だ。モディ政権が発足した2014年に世界10位前後だった経済規模は5位にまで上昇。23年度の実質国内総生産(GDP)の伸び率は前年度比8・2%で、世界屈指の高い経済成長を維持した。

モディ政権は国際的存在感を背景に、インド伝統の「戦略的自律」の方針の下で独自外交を進めた。日米豪との協力枠組み「クアッド」を重視しつつも、ロシア産原油を買い支えることも忘れない。GSの盟主としての立場固めも進め、昨年は20カ国・地域(G20)の議長国として成果文書に物価高などGSの懸念を盛り込んだ。

与党連合の支持を支えたのは、強いリーダーシップを発揮して「大国インド」を駆動するモディ氏の姿勢だといえる。3期目も「独自の価値観の下で実利に基づく外交」(ネール大のスワラン・シン教授)に変わりはなさそうだ。

■経済成長も高失業率

一方、国内で成長の実感は乏しい。地元誌が今年2月に実施した「インドが直面する課題」を問う調査では、「失業」と「物価高騰」が1位、2位を占めた。

特に失業率の高さは深刻だ。地元政策研究機関は、22年度のインドの失業率は7・5%で、15~24歳の若者に限ると45%に達すると指摘した。22年にインド国鉄が3万5千人の募集を行ったところ、1250万人が応募する異常事態となった。

モディ氏が選挙戦でイスラム教徒を「侵略者」と呼んで、8割を占めるヒンズー教徒の支持を固めようとしたのは、経済面の不満から目をそらすためでもあった。ただ、成長の果実を享受できない有権者の不満は確実に高まっており、与党連合の勢いをくじいた。