ロシア国防省の刷新人事、亡き「プーチン大統領の料理人」の願いかなう

AI要約

ロシア国防相解任と側近逮捕の影響について。人事異動の背後には何があるのか。

国防省の不正と汚職に対する議論。プーチン大統領の権威と戦略について。

プーチン氏の大統領選挙再選を控えた国防省の人事異動。意図と影響。

ロシア国防省の刷新人事、亡き「プーチン大統領の料理人」の願いかなう

ベルリン(CNN) 長く務めた国防相の解任は異例というわけではない。だが同時に側近5人が逮捕されれば、単なる心機一転でないことは明らかだ。ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアでは、なおさらだ。

2週間前に突然セルゲイ・ショイグ氏が国防相を解任された後、汚職撲滅の名目で、国防省上層部に次々と逮捕のメスが入った。

逮捕劇や人事異動はもちろんのこと、そのタイミングも興味深い。ほぼ3年間ウクライナの戦場で成果をあげられなかったロシアは、ちょうど形勢を盛り返してきたところだ。この数週間、北部ではハルキウ方面への大規模な攻撃を成功させ、東部でもドンバス地方で数々の成果をあげている。

ウクライナは致命的な人員不足と弾薬供給の枯渇に見舞われ、米議会で軍事支援策の承認が何カ月も滞っていたために情勢が悪化したことも、ロシアの形勢逆転に追い風となった。

だとすれば、勝機をもたらしている国防省で人事異動を行う理由は何なのか。

CNNが取材した専門家は、ロシアでも国防省はとくに汚職の温床だと語る。ロシア国営メディアでも目が飛び出るような額の軍事契約がすっぱ抜かれ、豪奢(ごうしゃ)な生活を送る国防省官僚が公然と非難されている。だが専門家の1人がCNNに語った言葉を借りれば、現在繰り広げられている交代劇は「非常に複雑で多元的な駆け引き」だ。そこにはタイミングと、西側への勝利というプーチン氏の命運をかけた戦いが絡んでいる。

今回の人事異動に漂っているのが、民間軍事組織ワグネルの創設者で、「プーチンの料理人」とも呼ばれたエフゲニー・プリゴジン氏の亡霊だ。

プリゴジン氏は生前、悪態たっぷりの抗議演説でショイグ氏とワレリー・ゲラシモフ参謀総長への憎悪をあらわにし、両氏と国防省の汚職と無能さを責め立てた。

プリゴジン氏がロシア政府を相手に起こした謀反は、ショイグ氏とゲラシモフ氏の解任で幕を閉じるはずだった。だが代わりに大統領を窮地に追いやり、大統領の権威を脅かした。これに対してプーチン氏はプリゴジン氏を売国奴と呼び、資産を凍結。ついにプリゴジン氏は側近とともに疑念の残る飛行機墜落事故で命を落とした。

以来、プーチン氏は国防省による武器調達の不手際やウクライナ侵攻の失態、汚職容疑の数々を世間の目から遠ざけ、謀反を受けた反射的な行動をみせないようにしてきた。反動で紋切型の行動をとれば、国民に対する大統領の権威と威力が疑問視されかねない。

プーチン氏は3月の大統領選挙で再選するのを待ってから、国防省のてこ入れを行うつもりだったようだ。人事異動が行われたのは5月9日の勝利記念日の直後だった。勝利記念日でプーチン氏はショイグ氏と並んで出席したが、はた目には友好的に見えた。

国防相から更迭されたものの、ショイグ氏は国家安全保障会議書記という新たな職務を与えられ、引き続きプーチン氏の指揮下に残る。