「監督は隙あらばボールを蹴っている」44歳玉田圭司は“全盛期”を知らない高校生に何を伝えているのか? 同級生たちと追う“第二の青春”

AI要約

元日本代表のストライカーである玉田圭司が、昌平高校サッカー部の監督に就任した経緯や想いについて語っている。

玉田は指導者としての成長を期待されつつも、自分のカラーを出し、結果を出すことが求められる立場であることを認識している。

過去の経験に囚われることなく、選手たちへの情熱を伝えることを大切にする玉田の姿勢は、周囲にも影響を与えている。

「監督は隙あらばボールを蹴っている」44歳玉田圭司は“全盛期”を知らない高校生に何を伝えているのか? 同級生たちと追う“第二の青春”

今季から埼玉県・昌平高校サッカー部の監督に就任した玉田圭司(44歳)。夏のインターハイでは同校初の全国制覇を達成するなど、元日本代表のストライカーが早くも結果を残している。監督就任の経緯から、高校生たちに伝えたい想いを語った。【NumberWebインタビュー全2回の後編】

 今季から高校サッカーの名門・昌平高校の監督に就任した玉田圭司(44歳)。1年間、スペシャルコーチとして強化に携わったあと、習志野高校時代の同級生でもある藤島崇之前監督から“正式オファー”が届いた。

 魅力的な条件ではあったが、「現役中は自分のこと中心で、家族に迷惑をかけてしまった」と話す玉田にとって自宅を離れ、埼玉でフルコミットすることは簡単ではなかった。だが、それを上回る熱量で誘ってくれた昌平に心が傾き、家族の了承を得て「監督」になることを決断した。

「指導者として生きていきたいという気持ちが強くなったし、昌平は個々の技術レベルなど全国トップを狙える素材が揃っている。こうした選手たち、同じ思いを抱いた仲間たちと一緒に戦えることは非常に光栄なことですし、なかなかないことですから」

 とはいえ、率いるのは強豪校、である。これまで気づいていたことを踏襲しつつも、自分のカラーを出すことが求められる。結果が出なければ「以前より弱くなった」というネガティブな声は出てくるだろう。ましてや玉田のような名選手であれば「選手としてはいいけど、指導者としては厳しい」というレッテルを貼られかねない。

 だが、それでも玉田は意に介さない。

「いきなり100点の監督なんて存在しない。ずっとやっていても完璧な監督はいない。完璧を周りに求められたとしても、それは多分できないと思う。でも、自分が完璧を求めようとすることはできると思うんで、それに対しての努力はこれからもしたいし、そういうことをするのが僕は好きなんですよ」

 昌平の練習を覗けば、選手たちと同じぐらい大きな声を出しているのは玉田監督だった。高校生たちの会話に重きを置いた指導はもちろん、実際にプレーを見せ、試合前のアップにも参加する。コミュニケーションを重視する姿勢はすぐに見て取れた。

 玉田がドイツW杯でブラジル相手にゴールを決めた2006年は、現在の高校3年生が生まれた年でもある。「僕の現役とか、あんまり知らないかもしれないじゃないですか」と照れ笑いを浮かべる。

「日本代表として試合に出て、W杯で点を取ったとか、大まかなことは知っていると思いますけど、どういうプレーヤーだったかまではわかっていないのかもしれない。実際にそんな話、選手からあまり聞かないですし(笑)。でも、だからこそ、僕は『この人、サッカーが本当に好きなんだな』と思わせたいですね」

 過去の実績に驕らず、情熱をもって接する。玉田の「サッカーを愛する気持ち」は、選手たちだけでなく、高校時代の同級生が多く揃うスタッフにも響いている。