【相撲編集部が選ぶ秋場所７日目の一番】琴櫻、前半戦で痛すぎる２敗目。全勝の大の里と２差で自力V消える

若元春（寄り切り）琴櫻

痛い。痛すぎる２敗目だ。

大関琴櫻が若元春に得意の左四つを許して寄り切られ、５日目の黒星に続く２敗目。この日も全勝を守った大の里との差が２つとなって、自力での逆転の目が消滅。目標としていた初優勝は遠くかすむ状況となった。

この日の相手の若元春とは、琴櫻が右、若元春が左のケンカ四つ。この一年の対戦成績では４勝１敗と分はいいが、モロ差しあるいは最低でも右四つに組めなかった時には危険がある相手ではあった。

立ち合い、琴櫻は右から左と小さく踏み込んでいつものようにモロ差し狙い。若元春は右は「相手の首を狙って突いていったのがすっぽ抜けた」と誤算があったようだが、一番大事な自分の左と琴櫻の右の差し手争いでは差し勝った。その後、両者上手を取り合い、土俵中央で左四つがっぷり。胸を合わせてのがっぷり四つのままなら、体は琴櫻のほうが大きいので、まだ戦えたと思うが、やはり左四つとなると、そこからの動きには若元春のほうに冴えがある。攻めながら左腕を張って琴櫻の上手を切り、優位な体勢に持ち込むとそのまま両廻しを引きつけて前進。最後は上手を放して体を預けながら寄り切った。

「しっかり落ち着いて、相手の廻しを切ってから攻めていきました」と若元春。これで５勝２敗と三役復帰へ視界よし。まだ大の里、霧島と対戦を残すので、今後に向けて優勝争いのカギを握る一人ではある。

さて、初優勝が遠くかすむことになった琴櫻。「左四つは警戒していたのか」の問いには「まあ頭にはありました」と答えたが「あの形にはなりたくなかった？」には「関係ないです」と、なんとなくコメントもうつろ。「切り替えます」とはしたが、照ノ富士の休場で出場力士の中では番付最上位者として臨んだ大チャンスの場所で、前半戦にして初優勝が遠くにかすむ状況になってしまった心境はいかばかりか。５日目、そしてこの日と、命綱の上手が切られてしまったのとともに、綱へ、そして優勝への期待も途切れてゆく格好となってしまった。

一方、初日から全勝街道をバク進する大の里は、このところ２場所連続敗れていた難敵・平戸海にも圧勝。平戸海の左前ミツを警戒するなら、立ち合いモロ手突きという選択肢もあったが、迷いを見せずにいつもどおり右から当たっていったことで、考え過ぎてモロ手突き対策に出た平戸海の、相手の手を払いにいくような立ち合いが不発。大の里は平戸海に左上手は与えたが、前ミツでなかったことと、タイミングが遅かったことで、まったく力を出させない快勝となった。

平戸海というヤマを越えた大の里は、大関昇進の目安とされる12勝へ向け、計算上は残り８日間を５勝３敗でいいことになった。残りの対戦相手予想は三役が２大関、２関脇の４人、平幕が若元春を含む４人。５勝３敗は十分実現可能な数字で、いよいよ大関、もちろん優勝も、現実的に視界の中に入ってきたと言えようか。

文＝藤本泰祐