【F1第16戦決勝の要点】イタリアGPで老練ぶりを発揮したフェラーリ。完敗したマクラーレンの誤算

AI要約

マクラーレンはモンツァGPでフェラーリに敗れ、ワン・ツー・フィニッシュを逃す展開となった。

レースではフェラーリの1ストップ作戦が成功し、モンツァでのタイヤ厳しさに照らし合わせて考えさせられる結果となった。

最終周にノリスがファステストを記録するも、マクラーレンはレッドブルとの差を覆すことができず、王座獲得を逃がしてしまった。

【F1第16戦決勝の要点】イタリアGPで老練ぶりを発揮したフェラーリ。完敗したマクラーレンの誤算

 マクラーレンにしてみれば、まさかフェラーリに敗れるとは夢にも思わなかったのではないか。

 前日に圧巻のポールポジションを獲得したランド・ノリス(マクラーレン)は、第1シケインまではリードを守るものの、第2シケインの飛び込みでオスカー・ピアストリ(マクラーレン)に先行され、続くターン6ではシャルル・ルクレール(フェラーリ)にも先行を許し3番手に後退してしまう。

 それでも14周目、ノリスは2番手のルクレールにアンダーカットを仕掛け、難なく2番手の座を取り戻すことが叶った。フェラーリ陣営はそのままステイアウトさせてもよかったはずだが、次の周にルクレールを入れてしまった。

「アンダーカットされるとわかっていて、どうして僕をピットに呼んだの?」と、ルクレールが無線で怒ったのも無理はない。想定より早い周回でピットインしたことで、1ストップ戦略の選択肢も消滅したと、この時点でのフェラーリ陣営は、そう覚悟したはずだ。

 これでマクラーレンは、もはやフェラーリは敵ではなく、ワン・ツー・フィニッシュを手中にしたと思ったことだろう。その証拠に23周目にはノリスに、「オスカーとレースをしてもいいよ」と伝えている。1.5秒後ろにつけるルクレールの存在は、完全に無視した内容の無線だった。

 とはいえマクラーレンもしばらくは、1ストップで行く可能性を探っていた。しかしノリスは32周目に2回目のピットイン。「1回で行けるか」と尋ねられたピアストリも、「ぜんぜんダメだよ。左フロントが完全に終わっている」と答えて、38周目に2回目のタイヤ交換に向かった。

 これで暫定ワンツーに立ったルクレール、カルロス・サインツのフェラーリ勢は、その後もスティントを引っ張り続けた。チェッカーまで残り10周余りとなった42周目、マクラーレン陣営もさすがに不安に思い始めたようだ。

 そこで「不可能だとは思うが、フェラーリの2台は1ストップを狙ってるかもしれない」と、ノリスに伝えた。そして「ここからは予選ペースで行ってくれ」と、指示を出した。13~19周以上フレッシュなタイヤを履くマクラーレンの2台なら、たとえフェラーリが1ストップで走り続けたとしても、コース上で抜き返せるに違いない、と。

 その目論見どおり、2番手につけていたサインツは攻略できた。ところがサインツよりさらに4周古いタイヤを履いていたルクレールのペースは、驚くほどに落ちなかった。終盤になっても1分23秒台をキープし続けたことで、ルクレールは5月に開催された第8戦モナコGP以来となる今季2勝目を挙げた。

 今季のフェラーリは、去年までの“一発は速いが、タイヤに厳しくレースでは持たない”という欠点を完全に払拭している。マクラーレンもその事実を認識していないはずはないが、完全再舗装でタイヤに厳しくなった今年のモンツァでの1ストップは、自分たちも含めあり得ないと思ったのではないか。

 ワン・ツー・フィニッシュに失敗したマクラーレンは、レッドブルとの30ポイント差をひっくり返すことができず、彼らを王座から追い落とすことはできなかった。最終周にノリスがファステストを決め、1ポイントを追加したのが、彼らのせめてもの意地だった。

[オートスポーツweb 2024年09月02日]