「僕がいた時にはこんなチーム作れなかった」男子バレー敗戦…柳田将洋が惜しむ“史上最高のチーム”の終焉「キャプテン石川祐希に今、伝えたいこと」

AI要約

バレーボール男子日本代表が52年ぶりのメダルを懸けたパリ五輪で準々決勝でイタリアに逆転負けを喫し、ベスト8で姿を消す。

寂しさと喪失感を感じつつも、選手たちは全員が力を出し切り、ヒリヒリするタイトな展開の試合を繰り広げる。

オリンピックの舞台で得た敗北から何を学び、日本代表は自らがやるべきことを信じて遂行し続けたが、最後にはイタリアに上回られた。

「僕がいた時にはこんなチーム作れなかった」男子バレー敗戦…柳田将洋が惜しむ“史上最高のチーム”の終焉「キャプテン石川祐希に今、伝えたいこと」

52年ぶりのメダルを懸けたパリ五輪。バレーボール男子日本代表は準々決勝で強豪イタリアに逆転負けを喫し、ベスト8で姿を消した。石川祐希ら多くの選手が涙したラストゲームを、元日本代表で前キャプテンの柳田将洋(32歳/東京グレートベアーズ)にレビューしてもらった。【NumberWeb短期連載・最終回】

 悔しいし、寂しい。

 もうこのチームで試合をすることはないのかと思うと、寂しさと喪失感の方が大きいかもしれません。それが今の素直な気持ちです。

 1セット目は日本が押し切りましたが、2セット目以降はすべて2点差。常にヒリヒリするタイトな展開でした。一点一点に目を向けても、セッター関田誠大選手が託すところでしっかり託していたし、石川祐希選手もかなり調子を上げてきた。何よりディフェンスもオフェンスも、あれほど痺れる場面で全員が正確なプレーをし続けた。普通に考えたらできることじゃありません。全員が力を出し切っていました。

 とはいえ、この日本代表は「金メダルを目指す」とオリンピックに臨んだチームです。プロとして、国を背負って戦っているからこそ、選手たちはきっと「やり切った」とは言わないでしょう。この結果に満足しないこともわかっています。

 悔やまれるのは第3セット終盤、日本が3点リードして得たマッチポイントを取り切れなかったところ。ただ、相手はあのイタリアです。そんなに簡単に取らせてくれるわけがないこともわかっていました。

 改めて、オリンピックの準々決勝という場所で、簡単な試合、簡単に取れる1点なんてないんだということを、応援する僕らも見せつけられました。

 この日本代表がスタートした2017年。僕もその中で戦っていた頃は、世界と戦う上で足りないものがハッキリとしていました。強いサーブに対していかにポイントをとられず、パスが割れたところから攻撃を展開できるか。ミドルブロッカーは横の移動を速くして、1回でも多く(ブロック)タッチが取れるか。有り余るぐらいたくさんの課題を一つ一つクリアして、日本代表は強くなってきました。

 バレーボール選手として失格かもしれませんが、この試合で何が足りなかったのか、何が勝敗を分けた差なのか、僕はうまく言葉にできません。それぐらい日本代表は自分たちがやるべきことを信じて遂行し続け、究極のバレーボールを見せてくれました。でもイタリアが、最後にその日本を上回ってきた。

 どのレベルでも、負ける試合には必ず負ける理由があります。でもそれが見つからない。そう断言できるぐらい、今まで積み重ねてきたものを存分に発揮していたと思います。だから「何が足りなかったか」と聞かれるならば「僕が知りたいです」としか答えられません。

「あそこでこうしていれば」

「あの時こうなっていたら」

 そうやって責められるようなプレーは一つもなかった。それほど精度の高いバレーボールと正しい選択を重ねていた。この壁を超えるための課題を見つけることが、日本のこれからの課題になる。もはや、その境地にいると思います。最後まで前を向いて、いい顔をして戦い抜いた選手たちにはリスペクトしかありません。これほどまでにすごい試合を繰り広げた選手に心から「お疲れさま」と言いたいです。