セーヌ川を泳いだ選手が本音で語る「水質汚染だけじゃない」問題点…トライアスロン“強行開催”メダル候補選手が涙「こんなことは今までなかった」

AI要約

パリ五輪でセーヌ川でのトライアスロン競技が実施され、水質汚染の問題が浮き彫りになった。

大雨による水質汚染の懸念、競技延期の影響、選手たちの対応など、様々な要因が明らかになった。

過酷な環境下での競技が行われたものの、選手たちは他の競技者と同じ条件下で冷静に対応した。

セーヌ川を泳いだ選手が本音で語る「水質汚染だけじゃない」問題点…トライアスロン“強行開催”メダル候補選手が涙「こんなことは今までなかった」

 パリ五輪開催前から水質汚染の問題が指摘されてきたセーヌ川で、トライアスロン競技のスイムが実施された。フランス国内外から懸念の声があがる中、実際に泳いだ選手たちが競技後に語った“本当の問題点”とは。1923年から遊泳禁止となっている「泳げない川」で泳いだ選手たちの本音を、現地で取材した記者が詳しく伝える。(全2回の2回目/「パリの猛暑事情」編も読む)

 恐れていた事態が起きてしまった。

 パリ五輪のトライアスロンのスイムの舞台となったセーヌ川。

 開催前から水質汚染が懸念されていた都市河川。パリ中心部を通る「ドブ川」(パリ市民がそう呼んでいる)はこの街を語る上でなくてはならない存在だ。パリは「右岸」と「左岸」に分かれる。セーヌ川を基準に右か左かで呼び名が変わる。パリを貫く大動脈。開会式での大雨が、通常時でも「大腸菌の数値が大阪・道頓堀の約6倍」とされた水質汚染をさらに悪化させた。

 大雨がなぜ水質汚染につながるのか。パリ市の下水道システムはそもそも、汚水と雨水が同じ管に入る「合流式」で知られている。その管に大量の雨水が入り込み、一定の量を超えると汚水がセーヌ川に流れ込んでしまうのだ。

 現地時間26日の夜から降り始めた雨が開会式後半には大きな粒となり、翌日まで続いた。もともとNGO団体の基準値を超えていたが、貯水槽設置などの浄化作戦によって、晴れれば泳げる基準値を下回ると見られていた。ただ、大雨だった場合については延期の可能性を示すのみ。そのシナリオが現実となった。

 加えて28日、29日と選手がそれぞれセーヌ川でのスイムトレーニングを予定していたが、いずれも中止。そして、30日予定の男子個人の本番までも延期に。結局行われたのは31日の女子と同日。8時開始の女子に続いて、10時45分開始となった。

 トライアスロンはセーヌ川へと飛び込むスイム1.5kmからスタートし、パリ市内を周回するバイク40kmを終え、最後にラン10kmを行う過酷な競技だ。

 もともと雨や暑さ、風など自然の環境に左右される競技なだけに1時間40分を超えるレースを終えた各国の選手に話を聞いても、不満をもらさない。「他の選手も条件は同じさ」とさわやかに答える。水質汚染、練習中止、そして延期もなかったかのように。