劇的逆転、かみ合った5人のチーム力で新たな歴史 五輪体操男子団体総合「金」

AI要約

パリ五輪体操男子団体総合で日本が逆転劇を成し遂げ、メンバー全員が歓喜の輪を作った。橋本大輝が団体金メダル獲得に感謝し、萱和磨も悔しさを乗り越えて涙した。

東京五輪の失敗から学んだ橋本は、自分だけでなくチーム全体の練習感想を率直に伝えるようになり、チーム力が生み出した逆転劇に貢献した。

チーム全員が力を合わせ、個々が役割を果たすことで、東京の教訓を生かしてメダルを獲得したチーム力が光った。

劇的逆転、かみ合った5人のチーム力で新たな歴史 五輪体操男子団体総合「金」

不調だった橋本大輝が会心の笑みで両腕を突き上げ、主将の萱和磨は泣き崩れる-。パリ五輪体操男子団体総合を逆転で制した瞬間、日本はメンバー全員で歓喜の輪を作った。

3年前の東京五輪で届かなかった団体金メダル。「みんなのおかげで取れた。みんなに感謝したい」と橋本。最終種目の鉄棒で、絶望的な3・267点差をひっくり返した逆転劇は、日本のチーム力が生み出した。

東京の経験は、橋本の考え方に変化をもたらした。演技で引っ張るだけでなく、「練習で感じたところは率先して言うべきだ」。周囲により目を向けるようになり、存在もひと際大きくなった。だが五輪が始まると状況は一変した。予選で精彩を欠き、この日もあん馬で落下。落ち込むエースに萱と杉野正尭から声が飛んだ。「まだあきらめるな。まだいける」

萱も東京の悔しさを体験した1人だった。決勝の前日「絶対に2番は嫌だ」と仲間に思いの丈をぶちまけた。東京は銀、パリでは橋本の不調で予選も2位。弱気なムードを変えたかった。

全員で挑んだ。橋本をつり輪と平行棒を除く4種目にとどめ、東京を知る谷川航が左足痛をおして3種目に出た。萱は出場全4種目で難しい1番手を担った。大黒柱に頼らず、おのおのが役目を果たしたことが最後の鉄棒につながった。

「0・103点」。東京で足りなかった差だ。これを埋める術は着地と定めた。現役時代に着地を武器にした内村航平さんが強化コーチとなり、2023年世界選手権に同行。「着地は止めるものではなく止まるもの」と説いた。正しく着地動作に入るには直前の技を正確に行う必要がある。そうすれば自然に「止まる」。そんなコツを伝えたのだ。この日、苦手なつり輪で着地を決め、得点を補った。

一方、「東京の雪辱」ばかりを前面に出すことは避けた。岡慎之助と杉野は初の五輪。過去より未来を見ることが重要と考えた。「Make New History!」。合宿初日に掲げたチームスローガンだ。

「5人ができる体操ニッポンを示すことが大事だった」。萱は説明する。全員が声をからし、演技を終えた仲間を笑顔で迎える。これこそがこのチームの真骨頂。パリの地で新たな歴史を紡いだ。(小川寛太)