「石川祐希のような選手と一緒にできて幸運だなと」盟友・柳田将洋の記憶に残る“5年前のミーティング”と“小さな差”「石川こそ努力の人」

AI要約

日本男子バレーボール代表は石川祐希を中心に選手ミーティングで目標を定め、一緒に向かって進むチームとして強さを発揮している。

2019年の全体ミーティングで石川が目標に異論を唱え、それをきっかけにチーム全体が目標を修正し、共通の目標に向かう姿勢を示す。

選手主体で意見を出し合い、目標を再設定してチャンスを掴む姿勢が日本代表の強さの一因となっている。

「石川祐希のような選手と一緒にできて幸運だなと」盟友・柳田将洋の記憶に残る“5年前のミーティング”と“小さな差”「石川こそ努力の人」

52年ぶりのメダル獲得を懸け、パリ五輪に臨むバレーボール男子日本代表。前キャプテン柳田将洋(32歳/東京グレートベアーズ)に日本代表の強さの理由や、選手選考への想い、現キャプテン石川祐希について語ってもらった。【NumberWebインタビュー全3回の3回目】

 今の日本代表の強さは、タイムアウト中の光景からも見て取れると柳田将洋は言う。

「石川(祐希・ペルージャ)選手が話したり、選手同士で会話をしていて、それを(フィリップ・)ブラン監督が静観しているという場面も多い。それは僕らの世界では結構珍しいんですよね。監督がまず口を開いて一回オーガナイズして、そのあとに選手が話すことが多いんですけど、日本代表は選手が結構話すなーと。

 そういうところも今、日本が特別な理由の一つだと思っています。言われて動くんじゃなく、常に自分たちで考え、自分たちの判断で動く。選手が主体になって目標を正し直すというのも、そうですよね」

 今の日本代表は、チームの目標を石川主将中心に選手ミーティングで話し合って決める。今年5月、パリ五輪の目標を「メダル獲得」に定めたが、その後ネーションズリーグでの銀メダル獲得を経て、ミーティングで目標を「金メダル獲得」に上方修正した。

「選手同士でそこを話せているのも、今日本が強い理由なのかなと客観的には思います。こういう(メダルの)チャンスってなかなかなくて、本当に今一番チャンスだと思うんですけど、それをつかむためには、しっかりと、なあなあにならずに目標を定め直すというのが組織として非常に大事だと思うので。

 自分たちの考えを一致させて目標を宣言するというのは、全員が改めてそこに向かってベクトルを正せる機会。ましてやオリンピックなんて、1人でもそこがずれていたらチームとして勝てないと思うので。機を逃さず、選手でしっかりとそういう時間を作るのはさすがだなと思いますね」

 もしかするとそのきっかけになったかもしれないシーンが2019年にあった。

 当時の日本代表は中垣内祐一監督が指揮を執り、柳田が主将を務めていた。その年の代表が始動する際の全体ミーティングで監督が、同年10月に行われるワールドカップの目標を「ベスト8以上」と告げた。

 そのとき隣に座っていた柳田と石川は顔を見合わせた。

「ワールドカップって何カ国出場するんだっけ? (12カ国)」

「オレら(15年の前回大会は)6位だったよね?」

 こんなやり取りのあと、石川が全員の前で「ベスト8では低すぎます」と指摘した。当時、石川はこう語っていた。

「やる気満々で(代表に)行っていたので、そういう目標を聞かされた時に納得がいかなくて。自分だけでなく他の選手もそうでしたし、自分たちが思っていることと監督スタッフの思っていることが一緒でないと、チームが強くなっていかないと思うので」

 柳田はこう回想する。

「そこはどうしても引っかかっちゃって(苦笑)。『やるならトップでしょ』みたいなところが僕らにはあったので。しかも2020年(開催予定だった)東京五輪の試金石になる大会で、『それは低くないか? 』というのが確かにあって。

 そこで口火を切って、声を出してくれたのが石川選手でした。口に出すということ自体はそれ以前にもありましたけど、目標を正し直すというのは初めて見ました。僕はキャプテンでしたけど、ありがたかった。『おー大丈夫か? 』みたいなのもありましたけど(笑)。やっぱり大事だよねそれは、という感じでしたね」