「複数都市」「長期間」でリヴァプール遠藤航&ドジャース大谷翔平も参加する大会へ【五輪サッカーの明日を守る「2つの選択」緊急提言】(3)

AI要約

オリンピック競技大会の開催方式を見直す必要性について提言が行われている。サッカーや他のスポーツも含めて、複数都市で長期間にわたって開催することが将来的な持続可能性につながる可能性がある。

大規模なスポーツイベントの拡大に伴い、複数都市での開催が一つの解決策として提示されている。日本が2020年大会を開催した経験から、開催都市に与える負担と競技施設の再利用問題が明らかになっている。

オリンピックの複数都市開催により、各都市で特化した競技が行われ、観客動員やテレビ放映のメリットも増加する可能性がある。

「複数都市」「長期間」でリヴァプール遠藤航&ドジャース大谷翔平も参加する大会へ【五輪サッカーの明日を守る「2つの選択」緊急提言】(3)

 パリ五輪の開幕が近づいている。サッカーは開会式よりも一足先に競技が始まる。オリンピックでの選手たちの活躍は楽しみだが、心配な点もある。はたして、現在の大会方式で、今後もスポーツの祭典は持続可能なのだろうか。サッカー、それ以外のスポーツ、そして、出場するすべての選手たちと五輪の「明日」のために、サッカージャーナリスト後藤健生が緊急提言!

 もう一つの考え方として、オリンピック競技大会の開催方式のほうを見直すことだ。

 現在のオリンピックは7月下旬から8月にかけての17日間に、1つの開催都市で行われる。時間的にも、空間的にも非常に集中した大会である。

 これを見直して、もっと長期間にわたって開催するか、複数都市で開催することができれば、解決につながるのではないか。

 サッカーのワールドカップも拡大に拡大を重ね、48か国参加となる次回2026年大会はアメリカ、カナダ、メキシコの3か国共同開催となり、さらに2030年大会もスペイン、ポルトガル、モロッコにウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイも加わった大会となる。その次の2034年にはサウジアラビア単独開催となる予定だが、このような大規模な大会を単独開催できるのは、無尽蔵の石油収入がある(と、彼らは思っている)サウジアラビアのような一部の資源を持つ独裁国家以外に考えられない。

 オリンピックもその拡大の勢いが止まらないとすれば、将来は複数都市開催を考えるべきだろう。2020年大会開催の経験を持つ日本国民は、開催都市にとってこのイベントの開催がどれだけ負担を強いられるものかは理解できるだろう。

 次回2028年のロサンゼルス大会ではクリケットが実施される。英連邦諸国を中心に非常に盛んなボールゲームで、世界で最も人口の多いインドで盛んなため、競技人口は非常に多いが、クリケットは日本ではほとんど知られていない競技だ。

 もし将来、日本で再びオリンピックを開催する日が来たとしたら、日本はクリケット競技場を新設する必要がある。しかし、日本では大会後のクリケット場の利用方法がないので、おそらく大会後には野球場に改装することになるだろう。

 たとえば、2000年のシドニー・オリンピックのときにシドニーのオリンピック・パーク内に建設された野球場は、その後クリケット競技場に改装されて使用されている。野球が普及していない国で開催された大会で建設された野球場は、後利用ができないのだ。

 その点、複数都市開催を許容すれば、野球は野球が盛んなアメリカや東アジア諸国、カリブ海地域で実施し、クリケットは英連邦諸国やインド亜大陸で実施すれば、競技場を新設する必要もなく、また、各競技にとって使い勝手の良い、大規模競技場でゲームをすることができ、観客動員数も増える。

 世界の複数都市で開催すれば、テレビ放映的にもメリットがある。

 つまり、24時間世界のどこかでオリンピック競技が実施されているので、テレビ局は24時間生中継を実施できるのだ。

 複数都市開催というのは、オリンピックにとって革命的な変化ではあるが、必ずしも前例がないわけではない。1956年のメルボルン大会では馬術競技はスウェーデンのストックホルムで開催された。他大陸とは地理的に隔絶されたオーストラリアでは動物検疫が厳しかったからである。また、今年のパリ大会でもサーフィン競技は南太平洋のフランス領タヒチで行われる。