粗さと怖さが共存、豪打のリードオフマン シュワーバーが強いフィリーズをけん引

AI要約

ナ・リーグ東地区のフィリーズは、前半戦を終えて最高勝率でリードするチームで、主砲のブライス・ハーパー選手やリードオフマンのカイル・シュワーバー選手が活躍している。

シュワーバーは豪打として知られ、打率が低くても長打を量産する選手で、ダルビッシュ有投手からのソロ本塁打も記憶に新しい。

シュワーバーは三振かホームランかの攻撃的なスタイルで知られ、打率や四球も記録しているが、打率向上にも取り組んでいる。

粗さと怖さが共存、豪打のリードオフマン シュワーバーが強いフィリーズをけん引

 今季の米大リーグで、前半戦を終えて最高勝率(6割4分6厘=62勝34敗)を誇ったのがナ・リーグ東地区のフィリーズ。オールスター戦にも出場した主砲のブライス・ハーパー選手とともに、リードオフマンのカイル・シュワーバー選手もパワフルな打棒が光る。31歳の左打者。2年前の本塁打王は、チームの勝利を最優先に考えて力強い打撃を見せている。(時事通信ニューヨーク特派員 岩尾哲大)

◆「1番指名打者」で貢献

 7月9~11日、ナ・リーグ西地区の首位を走るドジャースを本拠地フィラデルフィアに迎えた3連戦は、ポストシーズン前哨戦との見方もあった中、いずれもフィリーズが勝利を収めた。股関節を痛めて10日間の負傷者リスト(IL)に入っていたシュワーバーは、この3連戦から復帰。ドジャースの大谷翔平選手と同様、1番指名打者で出場し、3試合で本塁打2本を放って貢献した。ILに入ったのは「予防措置のようなもの」だったそうで、「100%になるように時間を与えてほしいと思っていた。ずいぶん良くなった」。豪打は健在だった。

 2022年に初の本塁打王(46本)に輝くなど、メジャー10年目で通算260本塁打を超える長打力が魅力だ。23年春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で米国代表に選ばれ、記憶に新しい日本との決勝では5番指名打者で八回、ダルビッシュ有投手(パドレス)から1点差に迫るソロ本塁打を放った。

◆打率1割台でも47本塁打

 23年シーズンは打率が1割9分7厘ながらも47本塁打。一方で22、23年とも200以上の三振を記録した。打率2割を切って40本以上の本塁打をマークしたのは23年のシュワーバーが初めて。同年、打率2割未満で120個以上の四球を選んだのも史上初だった。「三振かホームランか、四球か」と言えそうだが、この3要素を併せ持つことは、相手投手がいかに警戒していたかを端的に示す。粗さと怖さが共存するだけに、歩かせるケースも多かったのだろう。

 大谷も同僚のムーキー・ベッツ選手が故障してから1番に座るが、1番指名打者は日本では珍しい。シュワーバーは「打席に立つ前にスイングをし過ぎない」ようにして、リズムをつくっているそうだ。

 今季は7月14日に前半戦を終えた時点で打率2割4分9厘、19本塁打、54打点、出塁率は3割7分6厘。広角に打ち分ける打撃を意識しているようで「フィールド全体を使って、もっとライナーを打つようにしたかった。それが功を奏しているし、もっとできると感じている」。三振も既に100を超えているが、確実性が高まっており、投手からすれば脅威が増していることだろう。

◆「もう一度優勝を」

 今季に目指す個人成績を聞くと、「それを言うのは難しい」との答え。「もう一度優勝したい」と強調し、「特にここ1、2年は打率が上がらなかったが、何かでチームの役に立とうとと思ってきた。誰もが3割を打ちたいと思っているし、それを目指して努力する。だが、実際にはなかなか難しい。調子が良くない時でも出塁する方法を見つけないといけない」。そんな心掛けが、バットだけに頼らない、出塁率の高さにもつながっている。

 シュワーバーはカブス時代の16年、23歳でワールドシリーズ(WS)制覇を経験。開幕早々、外野守備で味方選手と交錯して左膝靱帯(じんたい)断裂の大けがに見舞われたが、驚異的な回復力でWSに復帰し、随所で活躍した。フィリーズに移籍して最初のシーズンの22年もWSに出場。チームは2勝4敗でアストロズに屈したものの、自身は3本塁打を放った。

 昨年はリーグ優勝決定シリーズでダイヤモンドバックスに3勝4敗。WSに進めなかったが、頂点を目指す地力は十分で、今季もレギュラーシーズンを快走している。「4打数無安打でもチームが勝てればうれしいし、4打数4安打でも負ければうれしくない」。そう話すスラッガーがトップバッターとして、強いフィリーズを文字通りけん引している。