現代版星野一義? リアム・ローソン、岩佐歩夢……海外からの“刺客”と戦い続ける野尻智紀。重圧感じるも「恵まれた環境にいる」

AI要約

2024年のスーパーフォーミュラは、TEAM MUGENの野尻智紀と岩佐歩夢がポイント争いを繰り広げている。昨年のチャンピオンである野尻は、有力なチームメイトとのタイトル争いに挑んでいるが、恵まれた環境に感謝している。

世界を目指す若手や外国人ドライバーとしての立ち位置を確立しつつある野尻は、岩佐や宮田など強力なライバルとの戦いに緊張感を覚えながらも、自分のベストを尽くす決意を示している。

チーム内競争はお互いの成長に繋がると語る岩佐もポジティブな姿勢を見せており、チームMUGENの2台は共に学び成長する場として確固たる位置を築いている。

現代版星野一義? リアム・ローソン、岩佐歩夢……海外からの“刺客”と戦い続ける野尻智紀。重圧感じるも「恵まれた環境にいる」

 2024年のスーパーフォーミュラはここ3戦を終えて、TEAM MUGENの野尻智紀がポイントリーダーにつけている。しかしその野尻を6.5ポイント差で追いかけるランキング2番手には、チームメイトの岩佐歩夢が控えている。

 野尻にとっては昨年のリアム・ローソンに続いて、またも有力なチームメイトとタイトルを争う形となっているが、こういった状況をどう捉えているか本人に心境を聞いた。

 野尻は2021年、2022年と、2年連続でシリーズチャンピオンを獲得した。特に2022年は予選で10戦中6回のポールポジションを記録し、決勝では全戦4位以上でフィニッシュ、ランキング2位以下に対して65点という大差をつけるなど、まさに敵なしのシーズンを送った。

 しかし昨シーズンは、レッドブル育成のリアム・ローソンがチームメイトとして加わると、そのローソンにデビューウインを掻っ攫われてしまうというほろ苦いシーズンスタートとなった。その後第3戦での接触リタイア、第4戦での病欠で出遅れ、そこからは第7戦、第8戦の2戦連続ポール・トゥ・ウインで意地を見せたが、宮田莉朋にチャンピオンを奪われ、自身はローソンに0.5ポイント及ばずランキング3位に終わった。

 そして迎えた今シーズン、野尻は新たに岩佐歩夢をチームメイトに迎えた。岩佐はローソン同様、レッドブルの育成ドライバーとしてF2で結果を残しており、F1を目指して更なるアピールをしたい立場だ。野尻は開幕戦と第3戦で優勝してランキングトップにつけているが、岩佐も第2戦、第3戦で2位に食い込みランキング2番手に肉薄している。

 昨年野尻を倒してチャンピオンとなった宮田が、今季はF2に参戦してル・マン24時間レースデビューも果たすなど、世界に羽ばたいたことを考えても、野尻は往時の星野一義のように、トップフォーミュラにおいて世界を目指す若手ドライバーや外国人ドライバーの“壁”として立ちはだかるような立ち位置になりつつある……そんな印象を受ける。

 野尻は、毎年のようにチームメイトとチャンピオンを争うことは大変だとしながらも、同時に恵まれた環境でもあると語った。

「岩佐選手のパフォーマンスはすごく高いものがあると思うし、間違いなくこの先も(優勝やタイトルを)争っていくことになると思います」

「毎年毎年大変だなと……(笑)。でも個人的には幸せなことに、すごく速いチームメイトが隣にいることで勉強になったことも多いし、恵まれた環境に常にいさせてもらっていると感じています」

「そういう緊張感があることで、レースをしているなと感じますし、緊張感やプレッシャーに晒されている時は逃げ出したいと思いますが、後で振り返ると『そういうのも良かったな』と思えるはずです。なんとか自分のベストを尽くして頑張りたいですね」

 一方の岩佐も、チームメイトの野尻と優勝やタイトルを争えることはポジティブなことだと語った。

「チーム内で競い合って切磋琢磨することで、チームとしても強くなれると思います。2台で競ってレベルが上がっていくことは理想的な状況だと思うので、自分としてはポジティブに捉えています」

「自分としても、これまで海外でやってきた中で毎年チームメイトが変わっていましたが、そこから学べることはそれぞれ違っています。今年も野尻さんとチームメイトになって、新たに学べることも多くあると感じているので、僕は毎年良いチャレンジができていると感じています」

 当然、チームメイトとタイトルを争うことはポジティブな面ばかりでないことは両者とも自覚している。TEAM MUGENの2台は昨年から常にセットアップを共有し、コース上でもチームオーダーを出されることなく自由にバトルをしてきたが、最終鈴鹿ラウンドでは予選アタックに向けたポジション取りやペースコントロールに関して、野尻とローソンが一触即発となる場面があった。

 これについて野尻は「昨年もありましたが、予選での位置取りなどに関しては、よりチームと会話をして意思共有をもっとしていかないとお互いがお互いの足を引っ張ってしまうかもしれないというのは、昨年の教訓としてあります」としている。