主将ファンダイクも納得か「EURO2024準決勝」で試された新ルール【サッカーの最も醜いシーンを撲滅「キャプテンオンリー」は正式ルールになるのか】(1)

AI要約

サッカーから、最も醜いシーンが排除される可能性がある。欧州選手権でテストされた新しいルールについて、サッカージャーナリスト大住良之が考察する。

新ルールでは、キャプテンのみが主審にアプローチできるようになり、選手たちの執拗な抗議や威嚇を防止することを目的としている。

このアイデアは国際サッカー評議会(IFAB)の年次総会で討議され、ルール改正の試行として認められたが、正式なルール化はされていない。

主将ファンダイクも納得か「EURO2024準決勝」で試された新ルール【サッカーの最も醜いシーンを撲滅「キャプテンオンリー」は正式ルールになるのか】(1)

 サッカーから、最も醜いシーンが排除されることになるかもしれない。審判への執拗な抗議を抑制するルールが、欧州選手権でテストされたのだ。このルールとサッカーの展望を、サッカージャーナリスト大住良之が考察する。

 7月10日(日本時間11日)にドルトムントで行われた欧州選手権(EURO)の準決勝。前半17分過ぎ、「オンフィールドレビュー」でイングランドにPKを与えるべきであると確認し、ピッチに出てペナルティースポットを指し示した後、フェリックス・スバイヤー主審(ドイツ)は、待ち構えていたオランダのキャプテン、フィルヒル・ファンダイクと歩きながら言葉を交わした。そして、そのままスムーズにPKの準備へと移っていった。 

 14日午後9時(日本時間15日午前4時)にベルリンで決勝戦の「スペイン×イングランド」を迎えるEURO。世界の耳目を集めたこの大会で、興味深い方法が実施された。「キャプテンのみが主審に話しかける(アプローチする)ことが可能」という方法である。

 サッカーにおいて、主審の決定は最終であり、常にリスペクトされなければならないという伝統的なルールがある。しかし実際には、主審に激しく抗議したり、ひどいときには5人、6人で取り囲んで罵声を浴びせるという行為が横行している。激情にかられた選手は怒りを露わにし、レフェリーに威嚇的な言葉を投げつける。それによって判定が覆ったことなど、聞いたことがないのだが…。

 サッカーという競技で最も醜いシーンのひとつと言っていい。サッカーしか見ない大半のファンにとっては見慣れた光景であり、もしかしたら、ファンの怒りをピッチ上で示してくれる選手たちを好ましく感じるときもあるかもしれない。しかし、他の競技に親しんだ人々にとっては、信じがたい蛮行と映る。少なくとも、サッカーのイメージを著しく損なう行為であるのは間違いない。

 さらに、あらゆるレベルで「もうイヤだ」と多くのレフェリーがピッチを去って行く最大の理由が、こうした選手たちからの抗議や威嚇であると言われている。

 そうした行為をなくすために考案されたのが、名前はどうも熟さないが、「キャプテンのみが主審に話しかける(アプローチする)ことが可能」という「新ルール案」だった。

 現行のルールでは、キャプテンといえども、レフェリーに判定の理由をたずねることはできない。それをキャプテンに限定して認め、それによって個々の選手が怒りにまかせて罵声を浴びせたり、何人もでレフェリーを取り囲むというシーンをなくそうという目的の「ルール改正案」である。

 このアイデアは、今年3月にスコットランドで開催された国際サッカー評議会(IFAB)の年次総会で討議され、正式な「ルール化」はされなかったものの、ルール改正に向けた「試行」のひとつとして認められた。そして年次総会から20日後の3月22日にIFABからの「回状」第29号として、世界各国のサッカー協会にその詳細が通知された。