大相撲名古屋場所展望 ―愛知県体育館最後の大相撲

AI要約

名古屋で行われる大相撲名古屋場所が新施設へ移転するため、最後の本場所となる。横綱白鵬や横綱千代の富士のエピソードなど、名古屋場所の思い出が語られる。

名古屋場所の特徴である支度部屋の広さや元大関魁皇が愛知県体育館での成功を語る。同じく引退を迎えた横綱千代の富士の記録更新も取り上げられる。

愛知県体育館に対する選手や観客の思い出深い思い出が述べられ、名古屋場所の歴史と共に振り返られる。

大相撲名古屋場所展望 ―愛知県体育館最後の大相撲

 今年の名古屋はひと味違う夏になりそうだ。大相撲名古屋場所は14日にドルフィンズアリーナで始まる。命名権の対象となる前は「愛知県体育館」として長く親しまれてきた会場は、来年から新しい施設に移るため、惜しまれながら最後の本場所となる。名古屋場所での思い出に来年へ向けての下準備、チケット完売の内情―。土俵上の勝負を含めて盛りだくさんの話題を携えながら、いよいよ初日を迎える。

 本場所が年6場所制となったのが1958年。最後に組み込まれたのが名古屋場所だった。1965年に会場が金山体育館から愛知県体育館に移り、数々の熱戦が繰り広げられてきた。近年では横綱白鵬(現宮城野親方)に絡んでの出来事が印象に残る。2010年は角界の野球賭博問題の影響で天皇賜杯がなかった。千秋楽の優勝インタビューでは涙を流した白鵬。口をぐっと結んで花道を引き揚げてきたが、あれほど悲しげな表情は見たことがなかった。2021年は千秋楽の結びで当時大関の照ノ富士と全勝同士でぶつかり、意地の小手投げで45度目の優勝。勝利後には雄たけびを上げたこの一番が、現役最後となった。

 名古屋場所で特徴的だったのは支度部屋の広さ。サブの体育館が丸々あてがわれ、東方と西方がパーテーション一つで仕切られていた。横綱朝青龍の激しいウオーミングアップでの息づかいなど、反対側の物音も響いていた。愛知県体育館の土俵を長く彩った1人に、幕内優勝5度の元大関魁皇(現浅香山親方)がいる。同親方は次のように述懐した。「やっぱり支度部屋が広かったのが印象的だった。しっかり体を動かせて汗をかき、コンディションをつくりやすかったので、自分はいいイメージを持てたのかも」。初の各段優勝となった三段目制覇に始まり、幕下優勝、大関昇進決定、2度の幕内優勝など輝きを放った。

 引退も2011年の名古屋。横綱千代の富士が持っていた通算勝利数の歴代最多記録(当時)を更新した場所でもあった。実は直前の公式行事の際に腰痛を悪化させ、状態は限界間近だったという。それでも5日目に旭天鵬を寄り切って通算1046勝目を挙げ、新記録を樹立。もう一つ白星を重ねた後、10日目に38歳で引退を決めた。浅香山親方はこう明かした。「正直きつかったけど、暑い中で来てもらったお客さんから熱い応援をいただいて力に変えられた。そういった意味でも愛知県体育館はとても思い出深い場所」と感慨に浸った。