インディカー新時代最初の一歩は大成功? ハイブリッド化で追い抜き増えず、トラブル発生も「これから良くなる」

AI要約

シーズン折り返し地点でハイブリッドシステム導入が実現し、信頼性とセルフ・スタート機能に関しては成功を収めた

ラップタイムやオーバーテイク数には複雑な評価があり、重量増加によるパスの難しさも指摘されている

ディクソンのトラブルで緊張感が高まりつつも、インディカーは新時代の幕開けを強調

インディカー新時代最初の一歩は大成功? ハイブリッド化で追い抜き増えず、トラブル発生も「これから良くなる」

 インディカー第9戦ミッド・オハイオは、全17戦で争われる今シーズンのちょうど折り返し地点であり、シリーズにとっても重要な節目のレースとなった。このレースでハイブリッドシステムが導入されたからだ。

 インディカーが最初にハイブリッド化を発表したのは2019年の8月。当初は2022年の導入予定だったが、新型コロナや部品供給の問題もあって2024年まで導入が先延ばしとなっていた。

 また2.4リッター化される予定だったエンジンも、現行の2.2リッターツインターボV6エンジンをそのままハイブリッドシステムに組み合わせることとなった。

 そして慎重を期してテストが続けられた結果、シーズン半ばについに新パワートレインのデビューにこぎつけた。

 そのデビュー戦が期待通りだったのか、正直なところその評価は悩ましいところだ。

 27人のドライバーがレース距離合計2160ラップ(80周×27人)中、97.9%にあたる2115周を走っており、その信頼性は称賛に値する。

 加えてハイブリッド・システムの最大の魅力のひとつであるセルフ・スタート・ソフトウエアは、エンストしたドライバーがボタンを押すだけでマシンを発進・再始動させることができる。これによりフルコース・コーションによる中断を防ぐことができるのだ。

 しかし、それ以外の要素は評価がより複雑だ。ラップタイムを比較すると1周2.258マイル(3.634km)、13ターンのロードコースでの今年のレース最速ラップが66.5386秒だったのに対し、2023年は67.9419秒だった。

 だが昨年のレース後に路面の再舗装が行なわれている。一部ドライバーが言及している通り、よりスムーズでグリップの高い路面に仕上がっていることを考えると、この違いを判断するのは難しい。

 さらに昨年のレースでは合計158回のオーバーテイクがあり、そのうち120回がポジション争いだったことも考慮しなければならない。一方で今年は合計116回、ポジション争いにおけるオーバーテイクは78回だった。

 プッシュ・トゥ・パスと合わせて合計800bhp以上を発揮できるようになったマシンで、オーバーテイクが難しくなったのはなぜだろうか。

 アロー・マクラーレンのアレクサンダー・ロッシは、ハイブリッド・コンポーネントによって重量が約45kg増えたことに言及した。

「ハイブリッドによって何かが変わったとは思わない」とロッシはmotorsport.comに語った。

「このクルマの重量でパスするのは本当に難しい」

 一方でロッシは、信頼性の面では強力な土台を築いたことを高く評価した。

「すごいのは、1台を除けば信頼性があったことだ」

「ハイブリッドのデビュー戦としては大成功だったと思う。まだ発展途上だ。これからも良くなっていくだろうし、そのポテンシャルをもっと発揮できるようになるだろう。それは誰にとっても同じことだ。トラックポジションの重要性はますます大きくなる」

 ロッシの言う1台とは、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)のことだ。ミッド・オハイオで歴代最多の6勝を誇るディクソンは、13番手からスタートする予定だったが、フォーメーションラップでストップしてしまったのだ。ディクソンはその後、22周遅れでレースに復帰したものの、最終的に40周を走ったところでメカニカルトラブルでリタイアしている。

 ディクソンのトラブルはハイブリッドシステムの放電に関連していると疑われており、インディカーは調査を続けている。

 ディクソンはチームメイトのアレックス・パロウに32ポイント差でランキング2番手につけていた。今回のトラブルで27位(最下位)となったディクソンはランキング4番手に後退し、80周のレースを僅差の2位で終えたパロウに71ポイント差をつけられている。

 ディクソンはトラブルについて、NBCに次のように語っている。

「なぜか、キャパシタが過剰に放電し始めたんだ。ハイブリッドのパワーセルに何らかの不具合が生じたようだ」

 インディカーのジェイ・フライ代表はミッド・オハイオ戦を総括し、motorsport.comに次のように語っている。

「多くの人たちによる壮大な努力の結果だった。シボレーとホンダが1年半ほど前から取り組んできたことに大きな賛辞を送りたい」

「最終的に27台が走ったのは大きな成果だ。週末の中では、6号車(アロー・マクラーレンのノーラン・シーゲル)が(ウォームアップ中にハイブリッドシステムを使って)マシンを再始動し、バックして走り去ったのを目の当たりにできたのも素晴らしかった」

「本当にクールなのは、我々がまだ使いこなせていないポテンシャルがまだたくさんあるということだ。でも、最初の週末としては本当に、本当に良かった」

 また、フライはディクソンのトラブルで一気に緊張感が高まったとも語った。

「ああ、間違いなくそうだ。原因が分からなかったからね」

「それまで週末は完璧だったんだ。スタート機能の件も含めて、明らかにうまくいっていた」

「我々のレースチームはこのシステムで3万1000km(約5万km)のテスト走行を行なった。チームもいつもと同じように多大なインプットをしてくれた。パドックから多大なサポートを受けていたんだ」

「しかし、そうだね。一度あのようなことが起こってしまうと、何が起こったのかわからなくなる。だが彼らはそれを解決し、レースに復帰した」

 フライはさらに、これがインディカーにとって新時代の初日であることを強調した。

「この先、すべてがどんどん良くなっていくと思う」

「これはプロセスなんだ。だから最初の週末としては本当に良いチェックができたと思うし、みんなの努力を誇りに思う」