車載カメラ・リチウムイオン電池は宇宙で使えるのか…パナソニックHDが宇宙産業参入へ実証

AI要約

パナソニックHDが超小型人工衛星を開発し、ISSでの実証実験を行う取り組みについて

地上での信頼性試験や宇宙空間での機能確認を通じて、宇宙産業への参入を図る

人工衛星の実用途や今後の展望について

車載カメラ・リチウムイオン電池は宇宙で使えるのか…パナソニックHDが宇宙産業参入へ実証

車載カメラやリチウムイオン電池(LiB)は宇宙で使えるのか―。パナソニックホールディングス(HD)は、開発した超小型人工衛星を国際宇宙ステーション(ISS)から放出する実証実験を4月に始めた。人工衛星そのものや、搭載するカメラ・電池などが宇宙空間でもきちんと動作するかを調べる。機器や部材の信頼性を確かめ、これから拡大が見込まれる宇宙産業にいち早く参入できるよう先鞭(せんべん)をつける。(大阪・森下晃行)

パナソニックHDは九州工業大学と共同で、10センチ×10センチ×30センチメートルの超小型人工衛星「CURTIS」を開発した。ISSから放出後、約1年間運用して実証する。パナソニックグループはこれまでも、ISSで使う掃除機を提供したり、電子基板材料を宇宙に送り込む実験を行ったりしてきたが、人工衛星の開発は今回が初めてだ。

パナHD技術部門の森将人部長は「実証は部品の販売やサービス展開の第一歩」と説明する。パナソニックグループ製の部材料を通じて「宇宙産業に貢献し、大きくしていきたい」と力を込める。

パートナーの九州工大は宇宙開発に積極的。真空チャンバーをはじめ、世界的に優れた試験装置を複数保有している。パナHDは打ち上げに先立って、人工衛星に搭載した車載カメラや円筒形LiBなどについて地上で信頼性試験を行った。

真空の宇宙空間は温度差が激しく、強い放射線にさらされる。過酷な環境で「どんなトラブルが生じる可能性があるかを知っておくことが重要だ」(森部長)。というのも、宇宙用の部品や装置は高コストのものが多いため「地上用に開発したものを転用できればコストを下げられる」と森部長は狙いを説く。

人工衛星自体の動作検証も目的の一つ。森部長は「超小型衛星は地球環境の監視や計測と相性がいい」と指摘する。実用化が進めば温室効果ガス(GHG)の影響を監視したり、海水温や気流を調べたりできるという。

パナグループは「パナソニックグリーンインパクト」という長期ビジョンを掲げ、環境問題への対応を重視した事業方針を示している。宇宙産業への参入も、環境問題に取り組む契機の一つになりそうだ。

実証は2025年の終了を見込むが、パナHDは人工衛星による実証を今後も継続する予定。次回以降はさらに検証の幅を広げる。人工衛星は基幹となる機能を備える「バス部」と、特定の目的に対応する機器などを積み込んだ「ミッション部」から構成する。森部長は「数年以内にバス部の小型化に取り組みたい」と展望を描く。

パナグループの基板などを活用し、電気回路設計を見直すことで、現在の2分の1程度まで小型化できる見通しだ。バス部が小さくなれば、代わりにミッション部を大きくできる。より多くの部材を積み込めるだけでなく他社製の機器も搭載できる。「さまざまな会社と共創して宇宙の利用を進めていきたい」と森部長は意気込む。