巨人はサウスポーが苦手…元コーチが打ち明ける、巨人が最も苦手とした「投手の名前」

AI要約

原監督は大敗を許さない考えを持ち、ファンに対してみっともない試合を見せることは許されないと考えていた。

巨人は左投手に弱いという評判があり、巨人戦では左腕を起用するチームが多かった。

巨人には左腕をぶつけることが戦略的な選択肢として利用され、その結果巨人は左投手に苦戦することが多かった。

巨人はサウスポーが苦手…元コーチが打ち明ける、巨人が最も苦手とした「投手の名前」

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巨人・原辰徳、名将・野村克也に仕えたオイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ監督、橋上秀樹氏が明かす、今勝てるチームを追求した著書『だから。野球は難しい』(扶桑社新書)から一部抜粋して、内容を紹介する。

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 ある試合で投手が大量失点をして、同一カード3連敗を喫した試合の直後、投手コーチとバッテリーコーチが原監督から大目玉を食らっていたことがあった。私はたとえ大敗しても、「長いペナントレースにおいての単なる1敗」としか考えていなかったが、原監督は違った。同じ負けるにしても、「大敗は許される負け方ではない」というわけだ。そう考えるには理由があった。

 巨人は日頃から多くのファンが東京ドームに見にきてくれる。なかには初めてドームで野球を見るという人や、年にたった一度の野球観戦で東京ドームを訪れるという人もいるだろう。そうした人たちに対して、みっともない試合などできない、というのが原監督の持論でもあった。

 こうした考えは原監督に限らず、かつて巨人を率いた川上哲治さんや長嶋茂雄さん、王貞治さんも同じ思いを抱いていたと聞く。大勢のファンの前で屈辱的な試合をしてしまい、ファンをガッカリさせるなんてもってのほか―。という意識で試合に臨むのは、ある意味、巨人ならではかもしれない。

 私が現役時代の大半を過ごしたヤクルト、コーチとして在籍した楽天は弱小チームだった時期が長かったし、試合で大敗することもしばしばあった。それは長いペナントレースを戦っていくうえで、「そのようなこともある」と割り切っていたこともあったが、巨人ではそれが許されないということに、ある意味、新鮮なカルチャーショックを受けていたのも事実だった。

 一方で、巨人打線を抑えるための方策として、他のチームからこんなことがよく言われていた。

 「巨人に勝つには左投手を当てろ」

 これはヤクルト時代の野村さんも常々言っていたことである。巨人は伝統的に左投手に弱い。俗に言う「巨人キラー」と呼ばれた歴代投手の、対巨人戦における勝利数のトップ10には、左投手が4人入っている。

 名前を挙げると、金田正一さん(第1位・65 勝)、山本昌(第3位・43勝)、江夏豊さん(第6位・35勝)、川口和久さん(第10位・33勝)らである(2024年3月時点のデータ)。

 右投手の数が上回っている(6人)ので極端に苦手ということはないだろうが、野村さんはとくにこの点を意識してか、

 「先発の力量があるなしにこだわらず、巨人には左投手を起用するんだ」

 と口酸っぱく言っていた。

 楽天の2006年時点のエースは右腕の岩隈久志だったことは誰もが認めるところだが、こと左となると、誰一人としてそう呼べる投手がいなかった。そこで有銘兼久や川井貴志といった、プロでは実績の乏しい左投手を巨人にぶつけることも実際にあった。

 巨人時代の2012年シーズン、ヤクルトとの開幕3連戦で、石川雅規、村中恭平、赤川克紀と3人の左腕をぶつけられ、1勝2敗と苦しめられた。その後も巨人と3連戦を戦うなかで、1人は左投手をぶつけられることが多かった。

 このとき私は、巨人に入ってあらためて、「左腕を苦手にしていると思われているんだな」ということを認識した。