自分の行動にフォーカス~舌痛症の治療~

AI要約

選択理論心理学では、行動を行為、思考、感情、生理反応の四つの要素に分解しており、これを「全行動」と呼んでいる。

全行動を車の図で説明し、行為と思考は変えやすいが、感情と生理反応は変えにくいとされる。

舌痛症の痛みをコントロールするには、思考と行為を変えることが有効であり、集中することで痛みを忘れる状態が共通している。

自分の行動にフォーカス~舌痛症の治療~

米国の精神科医ウィリアム・グラッサーが提唱した選択理論心理学では、人の行動を以下のように四つの要素に分解しています。

 1.行為(本を読む、歩く、物を買うなど)

 2.思考(考える、思うなど)

 3.感情(楽しい、イライラするなど)

 4.生理反応(汗をかく、心臓がドキドキする、舌の痛みや原因不明の症状など)

 この四つの要素が合わさって行動になると考えるので、選択理論ではこれを「全行動」と言います。

 例えば「本を読む」という全行動を考えてみましょう。

 本を手に取りページをめくる(行為)。読んでいる内容について考える(思考)。内容がすごく面白く読んでいて楽しい(感情)。本に引き込まれドキドキする(生理反応)。単純に本を読む行動でもこれらの要素で必ず構成されています。この生理反応の中に舌の痛みが含まれていると考えています。

 全行動を説明する際、車の図をよく使います。下図のように、前輪に「行為」と「思考」を、後輪に「感情」と「生理反応」をそれぞれ配置します。車で表現する理由は「変えやすいもの」と「変えにくいもの」を分けるためです。

 行為と思考は、自分の選択なので変えられることはお分かりいただけると思います。では、感情と生理反応はいかがでしょうか。

 車なので、ハンドルを右に切ったら、当然右に曲がります。前輪の方向を変えたら車の位置が動き、後輪も移動することを理解していただけるでしょう。つまり、後輪は「変えにくいが変えられる」のです。

 「うれしくなってください」と突然言われてもできません。ただ「うれしくなる」ためにはどうしたらよいかを考え(思考)、スマートフォンに保存してある楽しかった旅行の写真を見る(行為)。そうなったらどうなるでしょう。思考と行為を変えて感情をコントロールすることになると思います。

 生理反応はどうでしょうか。急に「汗をかく」わけにはいきません。ただ「汗をかくには走ればよい」と考え(思考)、「実際に近所を全力で走る」(行為)。その結果、当然、汗が出てきます。思考と行為を変えて生理反応をコントロールしたのです。

 では、問題の舌の痛み(生理反応)にはどう対応すればいいでしょうか。上記を踏まえると、思考と行為を変えれば舌の痛みもコントロールできることになります。

 舌痛症の方々に共通する状態があります。それは「仕事などで何かに集中しているときは痛みを忘れている」という点です。何かに集中して行動することで思考と行為が変わり、それに伴い感情と生理反応も変化していると言えると思います。であれば、それを意図的に行うことが痛みを改善する効果的な方法と考えられます。