小惑星「2024 PT5」2024年9月末から2か月限定で “第2の月” になると判明

AI要約

2024年に発見された小惑星「2024 PT5」が地球の重力に一時的に捕獲され、周回軌道に乗る “第2の月” となる可能性がある。

“第2の月” は地球の周回軌道に入る前に捕捉されることがあり、これまでに4例の天然の天体が確認されている。

小惑星は常に地球の近くを通過し、一時的に捕捉される可能性があるが、観測が困難であるため、多くが見逃されている。

小惑星「2024 PT5」2024年9月末から2か月限定で “第2の月” になると判明

地球の近くを通過する小惑星は、時々地球の重力で捕獲されて周回軌道に乗る、一時的な “第2の月” となることがあります。ただし、大半はあまりにも小さいために観測されておらず、たまに見つかっても、その多くはロケットなどの人工物を誤認しているケースです。地球を周回する小惑星が真に天然の天体であった事例は稀であり、確実なものはこれまでに4例しかありません。

マドリード・コンプルテンセ大学のCarlos de la Fuente Marcos氏とRaúl de la Fuente Marcos氏の研究チームは、2024年8月に見つかったばかりの小惑星「2024 PT5」の公転軌道を解析したところ、同年9月29日から11月25日まで(世界時)、地球の重力に一時的に捕獲される “第2の月” となることを示しました(※1)。研究者は、捕獲される前後の軌道から、2024 PT5が人工物である可能性は低いと考えているため、5例目の “第2の月” となる可能性があります。また、地球周回軌道に入る前に発見され、 “第2の月” となることが事前に予測されたのは2024 PT5が初めてです。

※1…この記事では、特に記載がない限りは世界時で日時を表します。

地球の周りを公転する衛星はいくつあるのでしょうか? 通常は「月」の1個しかないと答えるところですが、厳密には「天然の天体」かつ「恒久的な衛星」という但し書きが必要になります。

「天然の天体」は人工衛星を排除しているという意味なので分かりやすいですが、では「恒久的な衛星」の反対である「一時的な衛星」とはなんでしょうか? 地球の近くを通過する無数の小惑星は、地球に接近することでその重力を受け、軌道が変更されたり、たまに衝突することもあります。特に、地球に対する相対速度が遅い小惑星は、地球の重力によって捕獲されることがあるため(※2)、それまでの太陽を重力的中心とする公転軌道から、地球を重力的中心とする公転軌道に変化することがあります(※3)。

※2…より正確には、地心エネルギー(Geocentric energy)が負の値となる期間。

※3…これに対し、見た目だけは地球の周りを公転しているように見えても、実際には地球が重力的中心ではない天体は、地球の「準衛星(Quasi-satellite)」と呼びます。

地球を重力的な中心とする公転軌道はまさしく衛星であるため、これを「不規則天然衛星(Irregular Natural Satellites; NES)」と呼ぶこともありますが、どちらかと言えば口語的な “第2の月” や “ミニムーン” の方が、論文などでもよく使われます。とはいえ、このような小惑星の軌道は、地球を周回する月の重力の影響で不安定であり、長くても数年後に周回軌道を離脱し、再び太陽中心の軌道へと戻ります。

シミュレーションによれば、このような “第2の月” は、常に入れ替わりながら存在し続けると考えられており、例えば直径1mの小惑星は常時1個以上、一時的に地球の周りを周回していると考えられています。ただし直径1mとは、よほど条件が良くなければ観測できない大きさです。常時あるはずなのに見つかっていないということは、大半が見逃されていることになります。

それでも、たまに “第2の月” の発見報告はあります。ただしその多くは、人工物の誤認である可能性が高いと考えられており、いくつかは正体が確定しています。例えば2003年に発見された「J002E3」は、1969年に「アポロ12号」を打ち上げるのに使われたサターンVロケットの第3段ステージS-IVB-507と確定しています。誤って小惑星として正式に登録される場合もあり、例えば2020年に発見された「2020 SO」は、天然の天体として小惑星の登録もされた “第2の月” の候補でしたが、後に1966年に月探査機「サーベイヤー2号」を打ち上げたアトラス・セントールだと確定し、小惑星としての登録が外されています。

このような背景の下、真に天然の天体が “第2の月” になったと確実視されている事例はこれまでに4例あります(※4)。このうちの「2006 RH120」と「2020 CD3」の2例は、地球の周りを1周以上した「一時的に捕獲された周回天体(temporarily captured orbiters)」に、残りの「1991 VG」と「2022 NX1」の2例は、地球の周りを1周する前に離脱した「一時的に捕獲されたフライバイ天体(temporarily captured flybys)」にそれぞれ分類されます。

※4…1913年に観測された流星群「シリリッド」、2016年に観測された火球「DN160822_03」は、落下前に地球の周りを周回していたと推定されています。小惑星「2023 FY3」は過去または未来に地球周回軌道に入る可能性が示されていますが、具体的な時期は不明です。