不眠治療「薬より認知行動療法」に軍配 41%に効果、東大チーム

AI要約

不眠症になった人が治療を受ける際は、睡眠薬をのむより、不眠を悪化させている習慣を変える「不眠の認知行動療法(CBT―I)」から始める方が効果が高い。

東大などの研究チームが臨床試験を網羅的に調べ、認知行動療法が薬物療法よりも有効であり、途中で治療をやめる率も低かったことが明らかになった。

欧米のガイドラインでは認知行動療法を治療の第一選択として推奨されているが、実際は薬物療法が選ばれることが多い。

不眠治療「薬より認知行動療法」に軍配 41%に効果、東大チーム

 不眠症になった人が治療を受ける際は、睡眠薬をのむより、不眠を悪化させている習慣を変える「不眠の認知行動療法(CBT―I)」から始める方が効果が高いことを、東大などの研究チームが明らかにした。論文は27日、日本精神神経学会学術誌のオンライン版に掲載された(https://doi.org/10.1111/pcn.13730)。

 なかなか寝付けない、夜中に何度も目を覚ますなど不眠症状に悩む人は日本人の30~40%にのぼり、10%弱が慢性的な不眠症とされる。治療は薬のほか、認知行動療法、薬と認知行動療法の併用が効果があるとされている。ただ治療を始める際、どの方法が長期的にもっとも効果があるのかはわかっていなかった。

 東大大学院博士課程(精神神経科)の古川由己さんらのグループは、不眠症の初期治療について比較した臨床試験を網羅的に調べ、統計的に解析した。

 その結果、薬物療法によって長期間、症状が落ち着いた人は28%だったのに対し、認知行動療法は41%と、より効果が高かった。治療を途中でやめてしまう率は、認知行動療法の方が低かった。

 薬と認知行動療法の併用は、薬だけの治療よりは効果があったが、認知行動療法だけの治療より効果が高いとは言えなかった。

 日本睡眠学会のガイドラインは治療の順番として、睡眠に関する正しい知識を身につけ、生活習慣の改善を指導する「睡眠衛生指導」から始め、その後、薬物療法、認知行動療法へと進む、としている。一方、欧米のガイドラインでは、認知行動療法を治療の第一選択として推奨している。

 古川さんによると、実際は欧米でも薬物療法が選ばれる例がほとんどだという。「薬の処方に比べると認知行動療法は手間がかかるため、広がりにくいのが現状だ。ただ認知行動療法は効果が高いだけでなく、副作用も少ない。睡眠衛生指導は有効性が示されておらず、そこに割かれている時間をふりわけるなどして、患者が認知行動療法も選択できるようになると良い」と指摘する。