「海水のあるところ」の噴火様式のはずだった…「氷河」の山に現れた「炎の巨人」が、欧州で起こした「衝撃の大混乱」

AI要約

新たな火山島の出現は、島を知り地球を知る研究材料の宝庫。できたての島でなくては見ることのできない事象や、そこから伝わってくる地球のダイナミズムがあります。

今まさに活動中の西之島をはじめ、多くの島の上陸調査も行ってきた著者が、国内外の特徴的な島について噴火や成長の過程での地質現象を詳しく解説した書籍『島はどうしてできるのか』が、大きな注目を集めています。

ここでは、実際に現場を見てきた著者ならではの、体験や研究結果をご紹介していきましょう。今回は、マグマ水蒸気爆発にともなって、その火砕物と水との混合物が、ジェットとして噴出する噴火様式「スルツェイ式」噴火について解説します。

※この記事は、『島はどうしてできるのか』の内容を再構成・再編集してお届けします。

2021年に軽石の漂着で話題となった福徳岡ノ場の噴火でも観測されたが、マグマ水蒸気爆発に伴い、火砕物と水との混合物をジェットとして噴出する噴火様式を「スルツェイ式」噴火と呼ぶ。ジェットはしばしば勢いよく噴き上がるような鶏の尾の形状に似ることからコックス・テイル・ジェットと呼ばれ、この噴火様式を特徴付ける。

「海水のあるところ」の噴火様式のはずだった…「氷河」の山に現れた「炎の巨人」が、欧州で起こした「衝撃の大混乱」

新たな火山島の出現は、島を知り地球を知る研究材料の宝庫。できたての島でなくては見ることのできない事象や、そこから伝わってくる地球のダイナミズムがあります。そして、地球に生まれた島は、どのような生涯をたどるのか、新たな疑問や期待も感じさせられます。

今まさに活動中の西之島をはじめ、多くの島の上陸調査も行ってきた著者が、国内外の特徴的な島について噴火や成長の過程での地質現象を詳しく解説した書籍『島はどうしてできるのか』が、大きな注目を集めています。

ここでは、実際に現場を見てきた著者ならではの、体験や研究結果をご紹介していきましょう。今回は、マグマ水蒸気爆発にともなって、その火砕物と水との混合物が、ジェットとして噴出する噴火様式「スルツェイ式」噴火について解説します。

※この記事は、『島はどうしてできるのか』の内容を再構成・再編集してお届けします。

2021年に軽石の漂着で話題となった福徳岡ノ場の噴火でも観測されたが、マグマ水蒸気爆発に伴い、火砕物と水との混合物をジェットとして噴出する噴火様式を「スルツェイ式」噴火と呼ぶ。ジェットはしばしば勢いよく噴き上がるような鶏の尾の形状に似ることからコックス・テイル・ジェットと呼ばれ、この噴火様式を特徴付ける。

ただしこのような爆発に伴う現象を鶏の尾で代表することにはさまざまな意見があるかもしれない。薩摩硫黄島に関する解説で田中館秀三の調査報告における比喩に見たように、観察者の着眼点や表現力により変わってきそうだ。

スルツェイ式噴火ではベースサージと呼ばれる、水面を水平方向に高速で拡散する希薄な流れが発生することがある。このタイプの噴火に伴う危険な表面現象だ。マグマと水との相互作用により、マグマは細かく粉砕されて細粒火山灰の割合が多くなったり、発生した大量の水蒸気により噴煙が高く成長したりするという特徴もある。

このような噴火では湿り気も大きいため、火山灰は凝集して降下しやすくなり、噴出源に近い場所にも大量の砕屑物を堆積する。その結果、火口周囲には軽石や火山灰ばかりからなる堆積物(tuff)により「タフ・コーン(tuff cone)」や「タフ・リング(tuff ring)」と呼ばれる小高い地形がつくられる。2021年の福徳岡ノ場の噴火で生まれた新島も、同様のプロセスにより作られたものだ。