【夏休み自由研究サポート】電気を作る「電気微生物」を育てて「バケツ電池」で、電子オルゴールやモーターを動かしてみよう!

AI要約

微生物の中には電気を作るものが存在し、その仕組みは他の生物と異なる。この微生物は、体外に電子を放出するための通路を持ち、鉱物などに電子を渡して生きている。

この電気微生物は酸素を必要とせず、田んぼや海底の環境でも活動できる。泥の中や海底堆積物など、酸素が不足していても電子を受け取る物質が豊富に存在するためだ。

海洋研究開発機構がこの電気微生物を研究し、電池を作る実験を行っている。生物が電気を作る仕組みは不思議に思われるが、我々も同様に電子のやり取りを通じて生きている。

【夏休み自由研究サポート】電気を作る「電気微生物」を育てて「バケツ電池」で、電子オルゴールやモーターを動かしてみよう!

私たちの身のまわりには、目に見えないたくさんの微生物たちが生きています。海や川や地面の中はもちろん、私たちの皮膚や腸内にもたくさんの微生物がすんでいます。そんな微生物のなかには、ちょっと変わった生き方をするものもいます。

ここで紹介するのは、なんと「電気を作る微生物」。まだまだ研究が始まったばかりで、わからないこともいっぱいありますが、この微生物はそんなにめずらしいものではありません。田んぼの泥の中や花壇の土の中など、私たちの身近な場所にも生きているんです!

この「電気微生物」をつかまえてバケツで育てれば、その電気で電池が作れるはず。そこで、この電気微生物について研究している海洋研究開発機構(JAMSTEC)の鹿島裕之研究員に教わりながら、実験をしてみましょう!(取材・文/岡田仁志)

生き物が「電気を作る」と聞くと、とても不思議なことのように思う人が多いでしょう。でも、「電気を作る微生物」と似たようなことは、私たち人間をはじめ、ほとんどの生き物がやっています。いったい、どういうことでしょうか。

私たちの体は数十兆個もの細胞でできています。その細胞の中では、いつも「電子」というものが走り回っています。食べたものから電子を取り出して、吸った空気に含まれている酸素にその電子を渡しているのです。生きていくのに必要なエネルギーを得るためには、そういう電子のやり取りをずっと続けなければいけません。それは、ほかの生き物も同じです。

でも「電気を作る微生物」は、電子を渡す相手が、ほかの多くの生き物とは違います。多くの生き物は細胞の中に取り込んだ酸素などに電子を渡しますが、この微生物は細胞の外にある鉱物などに電子を渡すのです。

とはいえ、電子は体の中から勝手に飛び出しはしません。体の外に出すには、電気コードのような電子の通り道が必要です。「電気を作る微生物」は、体の中から外に出る「延長コード」のようなものを持っていて、それを外の鉱物などにつなげることで、電子をそこに捨ててしまうのです。

ですから、この微生物は、生きていくために酸素が必要ありません。たとえば田んぼの泥の中には、酸素はほとんどないけれど、酸素の代わりに「延長コード」をつなげれば電子を受け取ってくれる物質(水酸化鉄など)がたくさんあります。だから、「電気を作る微生物」が活発に生きていくことができるのです。

そういう場所は、陸上だけではありません。海の底にある「海底堆積物」とよばれる泥の中にも、酸素の代わりに電子を受け取ってくれる物質がたくさんあります。ですから海底にも、「電気を作る微生物」はすんでいるのです。