南海トラフが起きる確率は 地震予知学の専門家が鳴らす警鐘 2年後に発生したケースも

AI要約

日向灘での地震による津波注意報発令や被害状況

南海トラフ巨大地震のリスクと注意喚起

備えの重要性と次の巨大地震の不可避性について

南海トラフが起きる確率は 地震予知学の専門家が鳴らす警鐘 2年後に発生したケースも

「最初の1週間は可能性が高いが、2週間目は確率が小さくなるだけで、地震が起きる確率はゼロにはなりません」

 地震予知学などが専門の、東海大学・静岡県立大学の長尾年恭(としやす)客員教授は、そう話す。

 8日午後4時43分ごろ、宮崎県の日向灘で発生した、最大震度6弱の地震。気象庁によると、地震の規模を示すマグニチュード(Ⅿ)は7・1で、震源の深さは30キロ。宮崎、鹿児島、大分、高知、愛媛の各県の沿岸部に一時、津波注意報が発表され、宮崎県では約50センチ、高知県でも約30センチの津波が観測された。

 各地で食器が落下して破片が散乱するなど被害が相次ぎ、鹿児島県では住宅が倒壊した。SNSでは「ついに南海トラフ(巨大地震)か!」といった書き込みが溢れた。

 南海トラフ巨大地震は、静岡県の駿河湾から九州東沖にかけて延びる南海トラフを震源域とする地震だ。30年以内に70~80%の確率で発生し、想定されるMは8~9級、最大震度は7。死者は32万人に上るとされている。

 そんな中、8日午後7時15分、気象庁が初めて出したのが「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」だ。

発表後の会見で、評価検討会会長で東京大学の平田直(なおし)名誉教授は、「南海トラフ巨大地震が発生する可能性は普段より数倍高くなっている」と警鐘を鳴らし、気象庁は「今後1週間程度は注意を要する」と呼びかけた。

 先の長尾客員教授はこう言う。

「確率論でいうと、翌日に巨大地震が起きる可能性が100年に1度とすると、3万6500分の1です。それが、『巨大地震注意』によって、3万6500分の5程度になりました」

 ただ、「1週間経てば巨大地震が起きないわけではない」と強調する。

南海トラフ沿いでは、時間差で巨大地震が発生した事例が知られている。

 江戸時代の1854(安政元)年に起きた安政東海地震(Ⅿ8・6)の約32時間後には、安政南海地震(Ⅿ8・7)が発生した。一方、1944年の昭和東南海地震(Ⅿ7・9)の2年後の46年には昭和南海地震(Ⅿ8・0)が起きた。

「地震ではけがをしたり、命を落としたりすることもあります。つまり、確率は低くなっても危険はなくなりません。『注意』というのはそういう意味です」

 そのためにも、「備えが大切」と長尾客員教授は説く。

「津波からの避難経路を確認したり、食料や水は使った分だけ補充し一定量を保つ『ローリングストック』で備蓄し、簡易トイレの備えも必要。猫砂は脱臭効果がすぐれているので、お勧めしたいです」

 次の大地震がどこで起こるかは誰にもわからない。だが、「次の巨大地震」は必ず来る。そのことを忘れてはいけない。

(編集部・野村昌二)

※AERAオンライン限定記事