南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」とは?「警戒」ならどうなる?「今後1週間」の意味は?

AI要約

気象庁が日向灘沖でM7.1の地震発生に伴い、南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」を出す。南海トラフ地震はM9クラスの大地震が70-80%の確率で30年以内に発生する恐れがある。

南海トラフ地震は駿河湾から宮崎県にかけてのプレート境界を震源とする大規模地震で、過去に同時発生や時間差地震が起きてきた。被害想定では最大震度7、最大34mの津波、32万人超の死者、238万棟の建物損壊などが想定されている。

避難や防災対策で被害を軽減できる可能性があり、南海トラフ臨時情報はその役割も担う。

 気象庁は、8月8日午後4時42分ごろに宮崎県の日向灘沖を震源とするマグニチュード(M)7.1の地震が発生したことを受け、同日夜、南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」を出しました。南海トラフ沿いで巨大地震が発生する可能性が高まったと判断。住民や自治体などに対し、今後1週間は大きな地震に備え、防災対策に万全を期すよう促したのです。南海トラフ地震臨時情報が出されるのは、2017年にこの制度ができてから初めて。「注意」の内容はどのようなものでしょうか。そもそも南海トラフ地震臨時情報とは、どのようなものでしょうか。やさしく解説します。

 (フロントラインプレス)

■ 地震予知で“敗北”、巨大地震への注意を呼びかける制度に

 南海トラフ地震臨時情報を発表する仕組みは、2017年から始まりました。

 それまで日本では官民一体となって東海地震の予知に力を入れる体制を取っていました。1978年には東海地震の予知体制などを定めた「大規模地震対策特別措置法」が制定され、その下で前兆をキャッチする仕組みが整えられたのです。

 ところが、2011年3月の東日本大震災が事態を大きく転換させました。大震災の2日前に東北の三陸沖で起きたM7.3の地震を大震災の「前震」と評価できなかったとして、専門家らは地震予知の“敗北”を宣言。政府の中央防災会議は2017年に「現在の科学技術では確度の高い地震の予知は困難」と結論付けて予知体制を取りやめたのです。

 その代わりにできたのが、M6.8以上の地震やそれに関連する異常な事象を観測した際、次の巨大地震への注意を呼びかける制度として、「南海トラフ地震臨時情報」の制度を設けました。

 そもそも、南海トラフ地震とはどのようなものでしょうか。

■ 30年以内にM8~9クラスが70~80%の確率で

 南海トラフ地震は、静岡県の駿河湾から宮崎県の日向灘沖にかけてのプレート境界を震源域とする大規模地震です。これまで100~150年の周期で大規模な地震が発生。1707年の宝永地震のように駿河湾から四国沖の広い範囲で、同時に地震が発生したり、マグニチュード8クラスの大規模地震が隣接する領域で時間差をおいて発生したりしてきました。

 国の想定によると、南海トラフ地震の規模は東日本大震災と同レベルのM9クラスになる恐れがあります。2022年現在、南海トラフに沿ったエリアでM8~9クラスの地震が今後30年以内に発生する確率は70~80%とされています。

 被害想定も深刻です。2012年に中央防災会議が公表した想定によると、静岡県から宮崎県にかけての10県で最大震度7を観測し、沿岸部では最大34メートルの津波が発生。死者は最大で32万人超に上るとされています。

 建物の損壊は238万棟に達し、地震発生から1週間の避難者は1千万人近く。被害総額は220兆円を超すとみられています。この数字はその後、「建物の耐震化が進んだ」などの理由によって若干下方修正されましたが、甚大な被害が出ることに変わりはありません。

 ただ、早めの避難や事前の防災対策を講じることができれば、こうした被害は軽減できる可能性があります。「南海トラフ臨時情報」はその役割も担っています。