銀河系の外からやってくる成長途中のブラックホール

AI要約

超大質量ブラックホールの成長過程や中間質量ブラックホールの謎について解説されています。

新たな研究により、銀河系の球状星団「ω星団」の中心部に中間質量ブラックホールが存在する可能性が示唆されています。

ハッブル宇宙望遠鏡の20年間の観測データを分析し、星の移動速度から中間質量ブラックホールの存在が特定されたことが示されています。

銀河系の外からやってくる成長途中のブラックホール

数多くの銀河の中心部では「超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)」が見つかっており、その質量は太陽のおよそ10万倍以上、大きなものでは100億倍程度にまで及びます。

しかし、こうしたブラックホールも最初はひとつの恒星の超新星爆発から誕生するはずであり、理論上、その時の質量は太陽の数倍から100倍程度という小さなものだったと考えられます。つまり、誕生したブラックホールが超大質量ブラックホールになるまでには、誕生時から数十万~数億倍もの質量をもつまでの成長を遂げていることになります。

ブラックホールは周囲の物質を吸い込んだり、他のブラックホールと合体することによって重くなっていくのですが、これほど急激に成長する理由は未だ解明されていません。また、超大質量ブラックホールは銀河系(天の川銀河)を含め様々な銀河で頻繁に発見されているにも関わらず、その成長途中の段階にあたる「中間質量ブラックホール」は、ほんの数えるほどしか発見されていません。

宇宙に超大質量ブラックホールは数多く存在するのに、なぜ中間質量ブラックホールは滅多に見つからないのか? この事は現代の天文学の謎のひとつとされています。

ドイツのマックス・プランク天文学研究所のMaximilian Häberle氏らが科学雑誌Natureにおいて新たに発表した研究によると、彼らは「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」によって蓄積された過去20年間の観測データを統合することで、銀河系にある球状星団「ω(オメガ)星団」(ω Centauri)の中心部分の星の運動を計算し、その移動速度からω星団の中心部には中間質量ブラックホールが存在していることを突き止めました。

Häberle氏らは、ハッブル宇宙望遠鏡で撮影されたω星団の中心部の20年分の観測画像を重ね、移動していることが分かる星を検出して移動速度を計算したところ、秒速62キロメートル以上で動いている星を合計7個発見しました。この秒速62キロメートルという速度はω星団の重力を振り切るのに必要な脱出速度であり、これらの星の近くに中間質量ブラックホールのような極端に重い天体がない限り、これほどの高速度で動く星はω星団から即座に飛び出して行ってしまうはずです。こういった星が7個も同時に見つかったということは、その近くに中間質量ブラックホールが存在していることを示しています。