海水浴で最も危険な「離岸流」、見つけ方や対処法など知っておくべきことを専門家に聞いた

AI要約

離岸流は海岸から沖に向かって流れる危険な現象であり、多くの溺れ事故の原因となっている。特に波のある水辺で発生しやすく、注意が必要。

離岸流の兆候としては、暗い色の海水や波の切れ目、沖に向かう泡や砂の流れなどが挙げられる。専門家でも見つけるのが難しく、観察に時間がかかる。

離岸流を避けるためには、海岸の横や高い場所から観察し、安全な場所で波の楽しみを存分に味わうことが大切。

海水浴で最も危険な「離岸流」、見つけ方や対処法など知っておくべきことを専門家に聞いた

 海水浴に行く人はサメやエイやクラゲの心配をするかもしれないが、世界のどの地域の海岸にも、もっと危険なものがある。離岸流だ。海岸から沖に向かって流れる離岸流は、私たちを沖へ運んでゆく。沖に流されてパニックになり、強い流れに逆らおうとして体力を消耗すると、溺れてしまうことがある。

 米国ではライフガードによる救助の80%以上、英国では王立救命艇協会(RNLI)のライフガードによる救助の60%、日本では海水浴場での溺水事故の約50%(日本ライフセービング協会調べ)が離岸流に関連したものになっている。米フロリダのあるビーチでは、2024年6月の4日間に5人の観光客が離岸流に流されて溺死した。

 以下では、離岸流から身を守るために注意すべき点と、自分自身や誰かが離岸流にさらわれたときの対処法について解説する。

 離岸流は、海岸線に向かって直進してきた波が行き場を失って発生することが多い。

「右にも左にも逃げられない海水が集中し、なんとか逃げようとして沖に出ていくものが離岸流です」と、英サウサンプトン大学国立海洋学センターの講師であるサイモン・ボクソール氏は説明する。

 離岸流は波のある水辺ならどこでも発生し、大きな湖などでも見られるが、典型的には、傾斜のなだらかな海辺で発生する。ボクソール氏によると、海からきた波が折れ曲がり、海底の傾斜が全体的にゆるやかで、波が海岸線に垂直に入るところほど、離岸流が発生しやすいという。

 オーストラリアのブーメランビーチ、米国フロリダ州のパナマシティービーチ、ケニアのラム島はいずれも強い離岸流で有名だが、離岸流は波のある浜辺ならどこでも起こりうるので油断は禁物だ。

 離岸流の兆候としては、白っぽい海水の間に暗い色の海水が見えるところ、波の切れ目、沖に向かう泡や砂の流れなどがある。

「打ち寄せる波の間にずっと黒っぽい隙間が見えているなら、それはおそらく離岸流です」と説明するのは、“離岸流博士”として知られるオーストラリア、UNSW海岸安全研究グループのロブ・ブランダー氏だ。

 離岸流を見つけるには、海岸の横や、砂丘の上などの高い場所から、数分間海岸を観察するとよい。「海岸線から離岸流を見つけるのは難しいのです」とブランダー氏。「ちょっと見るだけでは分かりません」

 離岸流は専門家でも見つけるのが困難なことで知られ、数分単位で変化することもある。「私はサーフィン歴30年ですが、初めての場所で離岸流をすぐに見つけることはできません」と、英ウェールズのRNLIで海洋安全リーダーを務めるクリス・カズンズ氏は打ち明ける。