増え続ける在宅介護に潜む知られざる「睡眠障害」、在宅介護を難しくする要因の一つ

AI要約

夫婦の睡眠習慣の違いが引き金となる「睡眠離婚」や睡眠ノイズの影響について考察。

睡眠特性は体質に大きく影響されるため、パートナーとの調整が難しいことが多い。

介護者の睡眠問題は在宅介護の高齢化に伴い増加しており、家族の負担が大きくなっている。

増え続ける在宅介護に潜む知られざる「睡眠障害」、在宅介護を難しくする要因の一つ

 ナショジオ日本版サイトの5月のニュース「夫婦の寝室は分けるべきか、仲を円満にする「睡眠離婚」のコツ」をお読みになっただろうか。性格ならぬ「睡眠」の不一致で「離婚」、しかも夫婦円満のためとはなんぞや、と目を引かれた読者もおられたと思う。

 性格同様、睡眠習慣も日々付き合っていかねばならないパートナーの大事な特性である。なぜなら、大きなイビキや寝言、歯ぎしり、寝相の悪さなどの睡眠ノイズや、夜勤や交替勤務など生活リズムの問題は、本人だけではなく、寝室をともにするベッドパートナーの睡眠や休養にも影響甚大だからである。

「【悲報】長年連れ添っても夫婦の睡眠習慣は似ない」でも紹介したように睡眠時間や朝型夜型(クロノタイプ)などの睡眠特性は体質(多因子遺伝)的に決定されている部分が大きいため、パートナーに合わせて調整することは容易ではない。実際、長年同居していてもお互いの睡眠習慣がズレたままの夫婦が少なくないことが調査から明らかになっている。

 イビキや寝言、歯ぎしりなどの睡眠ノイズも長年続くことが多いことは経験的にもお分かりだろう。そのため、大事な休養時間である睡眠は寝室を分けることも含めて個々にマネージメントしましょうという決断は合理的であると言える。

 ところが、今回取り上げる介護者の睡眠問題はそのような「合理的な」解決が難しい。

 介護を要する人は年々増加傾向にある。厚生労働省「介護保険事業状況報告(令和3年度)」によれば要介護・要支援認定者数は約690万人おり、その中でも日常生活にほぼ介助が必要な要介護3以上の人が240万人を占める。

 介護施設に入所している要介護者については多くの施設職員が分担して当たることができるが、在宅介護の場合は少数の家族に大きな負担がかかる。要介護者のうち実に約60%が在宅介護を受けており、しかも介護者の高齢化、すなわち老老介護が問題となっている。

 老老介護とは介護者と被介護者がどちらも65歳以上の高齢者の場合を、超老老介護とは75歳を超えている場合をさす。厚生労働省の「2022(令和4)年国民生活基礎調査」によると、老老介護は在宅介護を行う全世帯の6割を超え、超老老介護も35%に達している。社会の高齢化によって介護される側も、する側も、心身ともに限界を迎えていると言える。