「屈折」はどのようにして起こっているのか?…アルゴリズム体操から学ぶ「屈折」のふしぎ

AI要約

物理に挫折した人のための読み物形式の記事。波動の屈折について解説。

高校物理の教科書に登場する屈折について、波動の性質から説明。

周波数は変えられず速度は変わるという波動の性質について詳細に解説。

「屈折」はどのようにして起こっているのか?…アルゴリズム体操から学ぶ「屈折」のふしぎ

物理に挫折したあなたに――。

読み物形式で、納得!感動!興奮!あきらめるのはまだ早い。

大好評につき5刷となった『学び直し高校物理』では、高校物理の教科書に登場するお馴染みのテーマを題材に、物理法則が導き出された「理由」を考えていきます。

本記事では波動編から、屈折についてくわしくみていきます。

※本記事は田口善弘『学び直し高校物理 挫折者のための超入門』から抜粋・編集したものです。

「屈折」という言葉は日常的によく使われる。一般的な意味では、性質や心情に、素直や単純でないところがあることを指す。

一方、高校物理にも「屈折」が登場するが、人間に使われる場合と同様にともかくまっすぐじゃないことを表現する。

何がまっすぐじゃないかというと、波動がまっすぐに進まずに曲がることをいう。もう少し丁寧に説明すると、音波や光など媒質中を進行する波動が、ある媒質から異なる媒質に進む際に、その境界で進行方向を変えることを指す。

波動は基本的に直進しかしない。曲がるとなれば「何か」が場所によって変わっていなくてはいけない。質点であれば、力が働けば運動の方向を変えることができるが、波動自体に直接力を及ぼすのは無理なので、別のことを考えなくてはならない。

波は空間を伝わっていく間、周波数は変えられない。これは以下の簡単な思考実験から理解できる。

『ピタゴラスイッチ』という子ども向け番組がある(大人のファンも多いが……)。そこで「アルゴリズムたいそう」という歌いながらユーモラスな動きをする体操がいつも披露されていた。

これは、立ち上がったりしゃがんだり、時に腕を伸ばして振り回したりする体操で、1人でやっている分には意味がわからない。だが、これを1列に並んで斉唱形式で披露すると、ユーモラスな一連の動きが見えてくる。

アルゴリズム体操のやり方はこうだ。まず2番目の人は1番目の人に1小節遅れて歌いながら体操を始める。3番目の人は2番目の人に1小節遅れて、というふうに順番に歌いながら体操をするのである。すると1人で歌いながら体操をしていたときは意味がわからなかった、立ったりしゃがんだり伸ばした手を振ったりという動作が、ちゃんと同期していることがわかる。

波の進行はこの斉唱が順番に始まっていく状態だと思えばいいし、一周期は同じ動作が繰り返されるまでの時間、そして波長は同じ動作をしている人間の間隔と思えばいいだろう。さて、「波長」のほうはある程度の自由があることがわかるだろう。一列に並ぶ、と言っても等間隔である必要はないだろう。

だが、周波数のほうはそうはいかない。歌のテンポ(周波数に相当する)を変えてしまったらだんだんずれが蓄積して体がぶつかってしまう。だから、波が伝わっていくときは、波長はわりとどうでもいいが、周波数はちゃんと決めないといけないのである。

周波数が同じで波長が変わると何が変わるかというと波の速度が変わる。並ぶ間隔を少し大きくすれば、斉唱が空間を伝わっていく距離が大きくなるので、結果的に速度が速くなる。

以上のことから、波動の性質として、

「周波数は変えられないが速度は自由に変わる」

という性質があることがわかる。