偶然発見された宇宙からのX線!その発生源「さそり座X-1」と「はくちょう座X-1」は、どんな星だったのか?

AI要約

物理学でも最大の謎である重力についての重要な科学史を紹介。

ブラックホールの発見からX線天文学の誕生までの歴史。

ジャコーニの発見によって新しい天文学分野が開拓された。

偶然発見された宇宙からのX線!その発生源「さそり座X-1」と「はくちょう座X-1」は、どんな星だったのか?

物理学でも最大の謎の一つとされているものが「重力」です。そこで、重力と天体にまつわる重要な科学史を、新刊『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』から紹介します。

いまや人類は撮影にも成功しているブラックホールですが、これまでその存在は物理学上の予言として考えられていました。では、人類が発見した最初のブラックホールはどのように発見されたのでしょうか。

第1回のノーベル物理学賞の受賞者が誰か知っていますか? 病院で使うレントゲンで知られるヴィルヘルム・レントゲンです。

1895年、レントゲンはある波長をもつ新しい種類の電磁波を発見しました。当初、この電磁波の正体は未知だったためX線と名づけられました。X線が可視光と同じ電磁波にもかかわらず、19世紀末まで人類が気づかなかった理由は、それが1000万度にも相当するような高エネルギーの電磁波だったためです。

一方、恒星の温度は、赤い星で数千度、青白い星でも数万度程度であることが知られています。そのため、X線発見から半世紀くらいの間は、このような電磁波が天体から発せられるとは考えられませんでした。

例外は、太陽の表面で起こる爆発現象である太陽フレアなどです。

太陽フレアではX線が発生します。こうした例外的現象は、ほんの短い時間だけ観測されるに過ぎません。そのため恒常的にX線を出し続ける天体など、誰も想像だにしませんでした。

1962年、イタリア人物理学者のブルーノ・ロッシとリカルド・ジャコーニは、X線を用いて宇宙を観察する装置を搭載したロケットを打ち上げる実験を行いました。観測時間はわずか6分弱です。

なぜ宇宙に打ち上げたのかというと、宇宙から来るX線は大気によって吸収されてしまうからです。宇宙空間なら、そのX線を検出できるはずです。実験前の予想では、太陽からのX線が月の表面で反射されたもののみが検出されるはずでした。

しかし、月からの反射X線以外にも、X線が検出されました。その想定外のX線が、さそり座の方向からやってきたことから、この謎の天体は「さそり座X-1」と名づけられました。

この発見こそが、のちに「X線天文学」とよばれる新しい天文学分野の誕生へとつながりました。

ジャコーニは2002年、この成果によってノーベル物理学賞を受賞しています。