常緑植物は葉の寿命を季節で変える…京大チームが解析、冬は「老化」止め枯れない

AI要約

常緑の植物が冬に葉を落とさない仕組みを解明した京都大の研究チームの発表。日照時間の変化に合わせて葉の寿命を調整することが判明。

アブラナ科の「ハクサンハタザオ」を用いて、常緑植物の葉の入れ替わりを4年半の解析で明らかに。冬は葉の老化を止め、同じ葉を最長8か月保つ。

日照時間が約11時間半で生育期と越冬期が切り替わることも確認。気候変動や農作物管理の観点からの応用が期待されている。

 葉を一年中つける常緑の植物は、季節に応じて葉の寿命を変化させることによって、冬に葉を落とさないようにしている仕組みを解明したと、京都大の研究チームが発表した。冬が近づき、日照時間が短くなると遺伝子のスイッチを切り替え、葉が枯れる「老化」を止めるなどしていた。気候変動で常緑植物が枯れるリスクの予測や、農作物の管理への応用が期待される。

 常緑植物も一枚一枚の葉には寿命があるが、年間を通じてどのように葉が入れ替わっているかよくわかっていなかった。京大生態学研究センターの湯本原樹・特定研究員らは、兵庫県内に自生するアブラナ科の常緑植物「ハクサンハタザオ」を使って、計約3500枚の葉の遺伝子の働きを4年半かけて解析した。

 その結果、3~9月の生育期には葉が効率よく光合成を行い、約2か月の寿命で枯れては新たな葉に入れ替わっていることを確認。一方、10~2月の越冬期には遺伝子の働きを変化させて葉の老化を止め、生育期から最長8か月も同じ葉を保つことがわかった。冬の間は養分を葉に貯蔵し、春の開花に備えているとみられる。

 また、日照時間が約11時間半となる3月上旬と10月上旬に、生育期と越冬期が切り替わることも突き止めた。

 チームの工藤洋教授(植物分子生態学)は「常緑の植物が、洗練された戦略で季節の変化に対応していることがわかり、驚いた。気候変動の影響や農作物の生育状況の把握などに役立てたい」としている。論文は国際科学誌に掲載された。

 草場信・広島大教授(植物遺伝学)の話「日照時間と老化の関連が明確なデータで示され、興味深い。生育の条件を変えるなどして、さらなる研究の発展に期待したい」