時速160キロ、メジャー投手が投げるボールの重力波で、打者のバットは何cm変化するのか?宇宙物理学者が計算してみると

AI要約

宇宙空間の歪みとして捉えられた謎の重力波の存在により、宇宙誕生に迫る最新の宇宙論が紹介されている『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』について紹介。

重力についての考察を通じて、メージャーリーグの投手が投げるときに発生する重力波の大きさを計算してみる。

重力波の大きさを求めるために四重極公式を用いて計算し、時速160キロメートルのボールを投げた瞬間に発生する重力波の大きさは約10のマイナス43乗という結果が得られた。

時速160キロ、メジャー投手が投げるボールの重力波で、打者のバットは何cm変化するのか?宇宙物理学者が計算してみると

 宇宙空間の歪みとして捉えられた謎の重力波の存在。世界に衝撃を与えたこの観測事実から宇宙誕生に迫る最新の宇宙論を紹介する話題の書籍『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』。

 この記事では現代の物理学でも最大の謎の一つとされている「重力」について考察していきます。ここで問題です。メージャーリーグ投手が投げる時速160キロメートルのボール。この瞬間に、どのくらいの大きさの重力波が発生しているのでしょうか? 

 *本記事は、『宇宙はいかに始まったのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

 これまでの記事では「重力波」という重要なキーワードが登場しました。これは、質量を持った物体(重力が働いている物体)が空間を運動しているときに発生します。そこで、地上における物体の運動の例を挙げながら、重力波の微弱さを評価してみましょう。

 現在、メジャーリーグでは日本人の二刀流選手が大活躍しています。そこで、豪速球投手の手から時速160キロメートルの速さでボールが投げ出される瞬間を考えてみましょう。

 その瞬間に発せられる重力波がホームベースの位置に届くとき、その重力波の大きさはどれくらいでしょうか。

 この計算をする際に役立つのが、重力波に関する「四重極公式」というものです。この四重極公式によれば、

 重力波の大きさ={G(万有引力定数)× 物体の質量×(物体の速度の2乗)}÷{(光速の4乗)×重力発生源からの距離}

 になります。ただし、簡単のため、厳密な数式において右辺に存在する定数因子をここでは1におきます。この定数は、物体の形状(連星なのか、楕円体の天体なのかなど)や運動の状態(連星ならば円軌道なのか、楕円軌道なのか、あるいは超新星爆発ならば、どの程度非対称に物質が吹き飛ぶのか)などに依存します。

 いまの計算の場合に必要となる数値は、以下のとおりです。

 メジャーリーグ認定の野球ボールの質量は約140グラム、ピッチャーマウンドからホームベースまでの距離は18.44メートルです。あと必要になるのは、基礎物理定数である万有引力定数の値の約6.7×10のマイナス11乗と、光速の値の秒速約3.0×10の8乗メートルです。

 これらの数値を上記の四重極公式に代入すると、投手が時速160キロメートルのボールを投げた瞬間に発生する重力波の大きさは、10のマイナス43乗と求められます。